高吸水性樹脂を用いたエクソソームの精製法を開発  徳島大学と三洋化成

様々な疾患の早期診断・治療方針決定や創薬開発への活用に期待

 徳島大学大学院医歯薬学研究部保健学域生体機能解析学分野冨永辰也准教授らの研究グループと三洋化成は24日、高吸水性樹脂(Superabsorbent Polymer、SAP)を用いてエクソソームを高精度・高収率に回収する精製法を開発したと発表した。
 今回の研究成果によって実現する高純度なエクソソームの手軽な利用は、さまざまな疾患の早期診断や治療方針の決定につながるだけでなく、創薬開発などにも革新をもたらすものと期待されている。
 徳島大学の研究グループと三洋化成は、同技術を通した疾病予防や健康寿命の延伸への貢献を目指しており、早期の社会実装を実現すべく、事業開発に向けた共創パートナー企業を募集している。
 エクソソームは、細胞から分泌される微小粒体である。細胞間でさまざまな情報を伝達する生体物質であり、疾病の診断や治療にも使えるとして近年脚光を浴びている。
 だが、その産業応用においては、回収、精製法に課題があった。現在、エクソソームの精製法としては超遠心分離精製法やポリマー沈殿法などが主流だが、これらの精製法で得られたエクソソームには不純物が多く含まれ、純度が低いといった問題があった。
 また、その他の精製方法においても、精製操作が煩雑で、回収に時間がかかる、高価であるなど、適切な分離法がなかった。
 そこで、徳島大学の研究グループは、尿などの検体を処理する際、不純物をSAPの内部に取り込み、エクソソームをSAPの表面に吸着させることで、特異的にエクソソームを分離する方法を見出した。
 SAPは架橋構造をもつ親水性のポリマーで、自重の数百倍から千倍の水を吸収・保持して速やかに膨潤し、ゲル状になるものだ。
 SAPを用いた分離法では、SAPの架橋ポリマーの網目サイズや表面吸着が分離精度に大きく影響するす。
 三洋化成は、1978 年に世界で初めて商業生産を開始して以降、さまざまなニーズに合わせて高付加価値のSAPを開発しており、これまでにさまざまなノウハウを蓄積してきた。今回、徳島大学の研究グループの基本構想・評価技術と三洋化成のSAPの設計・製造に関するノウハウを組み合わせることで、エクソソームの回収・精製に適した精製法の確立に成功した。
 同精製法は、従来の精製法と比べて迅速、簡便で、高純度なエクソソームを比較的短時間に多量に回収・精製することができるという特長を有している。こうした精製法を用いることで、高純度なエクソソームを手軽に利用できるようになり、さまざまな疾患の早期診断や治療方針の決定につながるだけでなく、創薬開発などにも革新をもたらすことが期待される。
 徳島大学の研究グループと三洋化成は、今回、確立した精製法の実用化をパートナー企業との連携によって加速させ、疾病予防や健康寿命の延伸に貢献したいとの意向を示している。

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