受験シーズン到来でコロナ禍による高校生の巣ごもり便秘がさらに増加  日本トイレ研究所

2人に1人は便秘状態・便秘予備軍

 特定非営利活動法人日本トイレ研究所は、全国の高校生男女1000人を対象に排便事情に関する調査を実施し。併せて、現役東大生50人を対象に受験期も含めた排便事情についての調査を行い、それらの調査結果を公表した。
 主な調査結果の概要、中野美和子氏(神戸学園理事・校長、さいたま市立病院 小児外科/非常勤・元部長)のコメント、調査結果の詳細、日本トイレ研究所の考察は、次の通り。

【主な調査結果の概要】

高校生、2人に1人は便秘状態・便秘予備軍 コロナ禍による生活リズムの乱れで便秘になる事例が増えている

・高校生の便秘実態 20.2%「便秘状態」、27.0%「便秘予備軍」、高校生の約半数(47.2%)が便秘状態・予備軍。

・コロナ禍は高校生の排便事情にも影響!高校生の4人に1人がコロナ禍で便秘になることが「増えた」(24.0%)。

・コロナ禍で運動の機会が減った高校生では、「便秘が増えた」が3人に1人(32.9%)と便秘の悩みがより深刻に。

便秘状態の高校生は心身共にさまざまな不調を抱え、9割が「勉強に集中できていない」

・便秘状態の高校生の86.6%と、9割弱が「勉強に集中できていない」と実感。

・勉強に集中できない理由、便秘状態の高校生は「体の不調」で便秘ではない高校生との差が大きい。

・集中できないとき、「眠気」「イライラ」「頭痛」「肩こり」「肌荒れ」などの不調が表れるが、便秘状態の高校生は、便秘がない高校生に比べて発症率が高い。便秘は心身のさまざまな不調につながり、勉強の集中力を低下させていると考えられる。

・高校生の71.8%が知らない! 「慢性的な便秘は集中力をそぐ」という事実。

勉強の合間に食べたい便通改善に良いとされる飲食料品TOP3 「水」「お茶」「高カカオチョコレート」

・便通改善に良いと思う飲食料品TOP3 「ヨーグルト」(60.2%)、「乳酸菌飲料」(50.4%)、「バナナ」(42.4%)。

・勉強の合間に食べたい便通改善に良い飲食料品TOP3 「水」(79.9%)、「お茶」(70.3%)、「高カカオチョコ」(64.8%)。

東大生は便秘になりづらい生活習慣を無意識に行なっていた!? 東大生の生活習慣から分かる合格の秘訣

・排便の頻度「3日に1回以下」東大生8.0%:高校生19.6%。東大生の方が排便の頻度が高い。

・現役東大生、大学受験時の生活習慣TOP3、「学習時間の確保」「朝ごはんを食べる」「栄養バランスの良い食事」。

・現役東大生の94%とほぼ全員が大学受験期に「集中を心がけていた」。

【中野美和子氏のコメント】

中野氏

・高校生の便秘状態の割合が5人に1人とかなり多かった要因として、受験のストレスの影響が大きいことなどが関与している可能性。また、新型コロナウイルスの流行により、心身ともに様々な影響が出ているものと思われる。

・高校生は勉学中の集中力低下が便秘状態群で多く、その際の心身症状もかなり強く、本来の勉学に影響が出ている可能性がある。東大生については受験時に集中できたという人の割合が高く、基本的な生活習慣が実行できていた人が多い。
基本的生活習慣は排便状態に結びつくため、便秘が少ない結果となっている可能性が高い。

・勉強の合間に便通改善に良いとされる食品(菓子)で取りたいものの第1位が高カカオチョコレート。便秘改善作用もあり、適切な量なら手軽で良い選択と言える。

【調査結果の詳細】

高校生の便秘実態 便秘状態・便秘予備軍は2人に1人

高校生の5人に1人は便秘状態! 予備軍含めると高校生の2人に1人(47.2%)

 高校生男女1000人を対象に、排便について聞いた。まず、現在の排便回数は、「1日1回以上」が55.5%であったが、約半数(44.5%)は1日1回未満で、「3日に1回程度」10.2%、「4~5日に1回程度」4.0%など、排便が3日に1回以下の高校生が約2割(19.6%)いた[図1]。
 また、排便状態は、「排便しても便が残っている感じがある」(22.4%)、「排便中に強くいきむ必要がある」(21.6%)、「うさぎのようなころころした便や硬い便が出る」(14.7%)という結果であった[図2]。
 2つ以上該当する人は「便秘状態」、1つ該当する人を「便秘予備軍」と定義すると、今回の調査では、20.2%が便秘状態、27.0%が便秘予備軍と考えられ、高校生の47.2%が便秘状態・便秘予備軍に該当している[図3]。

 便秘状態を性別でみると、男性の便秘状態が9.7%に対し、女性は26.4%と高い。また、学年別では、高校1年生の便秘状態が23.1%と2年生・3年生と比較し高くなっている[図4] 。
 [図5]では、便秘実態別の現在の便秘認識を見ている。便秘状態(2つ以上該当)の人で「便秘だと思わない計」は26.2%、便秘予備軍(1つ該当)の人では38.1%で、実態と意識にギャップがみられた。

コロナ禍で高校生の4人に1人は便秘になることが増えている

 排便についてコロナ禍の影響を調べてみた。コロナ禍で便秘になることが「増えた」と答えたのは24.0%で、高校生の4人に1人が便秘が増えたと感じている。また、「コロナ禍で運動する機会が減った」と答えた高校生355人で見ると、便秘になることが「増えた」(32.9%)のは3人に1人とさらに多くなっている[図6]。

便秘の高校生は、心身共に不調が多く勉強に集中できていない

便秘状態の高校生の9割弱が「勉強に集中できない」(86.6%)と感じている

 便秘が勉強にどんな影響を及ぼすのか、調べてみた。最近、授業中や自分自身で勉強を行う際に集中できていないかについては、全体では29.0%が「よくある」と答えている。図2で便秘状態と考えられる高校生では、41.6%と約4割が集中できていないことが「よくある」と答えている。「たまにある」(45.0%)と答えた人を加えると、便秘状態の高校生の約9割(86.6%)が勉強に十分集中できていないと考えらえれる[図7]。

集中できない理由、便秘状態の高校生は、便秘でない高校生より「体の不調」感じる割合が20ポイント以上も高い

 勉強に集中できないと答えた高校生713人に集中できない理由を聞くと、「疲れている」(56.7%)、「勉強がつまらない」 (42.8%)、「他にやりたいこと・考えたいことがある」(35.2%)が上位に挙げられた。
 この結果を便秘状態のある・なしで見ると、便秘状態の高校生はいずれのスコアも高く、「疲れている」は67.4%と平均(56.7%)より10.7ポイント、「体の不調」は37.1%と平均(22.4%)より14.7ポイントも高くなっている。
 さらに、便秘でない高校生と比較するとその差はさらに大きく、「体の不調」は便秘でない高校生15.8%に対し、便秘状態の高校生は37.1%と21.3ポイントもの差がある[図8]。

便秘状態の高校生は、眠気やイライラ、頭痛や肩こり、肌荒れまで、心身共に不調まみれ

 集中していないときにどんな症状を感じるかの具体的な設問では、「眠気」(56.1%)、「イライラ」(38.8%)、「気分が優れない」(33.1%)、「頭痛」(28.3%)、「肩こり」(24.7%)、「肌荒れ」(24.3%)、「腰痛」(16.3%)など心身にわたりさまざまな症状が表れている。


 また、便秘状態の高校生は、平均と比較して「便秘」(29.1%、平均+16.7ポイント)のスコアが高いだけでなく、いずれの症状も反応が高く、「肩こり」は41.1%と平均より16.4ポイント、「眠気」は72.0%と平均より15.9ポイントも高くなっている。
 便秘でない高校生と比較すると、「肩こり」 便秘あり41.1%:便秘なし16.7%で24.4ポイント差、「イライラ」便秘あり53.7%:便秘なし31.3%で22.4ポイント差、「気分が優れない」 便秘あり48.0%:便秘なし27.4%で20.6ポイント差など、その差はさらに大きくなっている[図9]。

便通改善に良いとされる食品で勉強の合間に取りたいのは 「水」「お茶」「高カカオチョコレート」

高校生の7割が知らない事実 便秘は集中力をそぐ!

 便秘は、高校生の集中力や体調に大きく関係していることが分った。実際、「慢性的な便秘は、精神的な生活の質の低下が示されており、集中力をそぎ、日々の生活に心理的な悪影響を与える」と言われている。

 この事実を提示し知っていたかとの設問では、全体の71.8%が「知らなかった」と答えた。便秘状態である(75.2%)・便秘なし(77.3%)にかかわらず、「便秘が集中力をそいでしまう」事実は、あまり知られていないようだ[図10]。

便通改善に良いとされる飲食料品で勉強の合間に取りたいのは、「水」「お茶」「高カカオチョコレート」

 勉強の合間に食べているものを聞くと、「チョコレート」「グミ」「ガムや飴」「高カカオチョコレート」の順となった[図11]。
 一方、便通改善に良いと思う飲食料品は、「ヨーグルト」(60.2%)、「乳酸菌飲料」(50.4%)、「バナナ」(42.4%)、「水」(41.9%)が上位に挙げられた[図12]。これらのうち、勉強の合間に取り入れたいものを聞くと、「水」(79.9%)や「お茶」(70.3%)の飲み物に次いで、食品では「高カカオチョコレート」(64.8%)がトップに選ばれた[図13]。

 前述図6の通り「コロナ禍で運動する機会が減った」高校生は355人(35.5%)いたが、コロナ禍で変化した事例を聞いた。すると、「学校のイベントが中止」(61.8%)、「友達と遊びに行くことが減った」(52.2%)、「日ごろの部活動が中止」(36.4%)が上位に挙げらした [図14]。

現役東大生の94%が受験時に「集中」を心がけていた

現役東大生の排便の頻度 8%が「3日に1回以下」排便、高校生(19.6%)よりも排便の頻度は高い

 現役東大生50人を対象に、排便の頻度を聞いた。現在の排便回数は、「1日1回以上」が56.0%、「2日に1回程度」が36.0%となり、東大生の92.0%が「2日に1回以上」の排便がある。「3日に1回以下」の東大生は8.0%、高校生では19.6%が「3日に1回以下」であった[図15]。(ただし、東大生の人数が50人と少ないことや、回答者が機縁法により選ばれたため、排便に関心のある人に偏った可能性がある)

現役東大生の受験期の生活習慣、「勉強時間」と並んで重要な「朝ごはん」「栄養バランスの取れた食事」

 大学受験の頃の生活習慣を聞いた。すると、「学習時間を確保」(96.0%)、「朝ごはんを食べる」(90.0%)、「栄養バランスの取れた食事」(80.0%)がTOP3となった。勉強時間に次いで、食事が重視されている [図16]。

現役東大生の94%が受験期の勉強で「集中」を心がけていた!

 [図7]では、高校生の7割が勉強するときに「集中できない」(71.3%)と答えているが、東大生の大学受験時の状況を訪ねた。すると、「集中できないことがあった」と答えた東大生は56.0%と、高校生より15.3ポイント低くなっている[図17]。また、大学受験で勉強をするとき、「集中を心がけていた」と答えたのは東大生の94.0%(いつも心がけていた:40.0%+大体心がけていた:54.0%)と圧倒的多数で、ほとんどの東大生が勉強をする際に集中を心がけている[図18]。

【中野美和子氏による高校生と東大生の排便事情の解説】

 今回の高校生(特に排便の訴えについての背景はない)1000人調査では、自覚的な症状からみて国際的な学会基準での便秘症にあてはまる人(基準6項目中2項目以上該当)は、20.2%に上った。基準は満たさないが疑わしい人(基準6項目中1項目該当)は27.0%で、合わせると47%になる。
 2013年の厚労省国民生活基礎調査では、10代の便秘の有症率は男性0.4%、女性1.7%で、今回の調査と相当の乖離がある。今回の調査では、排便の回数だけで見ても4~5日に1回以下の人は9.3%で、かなり多い。
 便秘状態の割合が5人に1人とかなり多かった要因として、回答者が女性63%とやや多かったことや、学年が上がるにしたがって便秘予備軍の割合が増加しているため、受験のストレスの影響の大きさが関与しているのではないだろうか。
 また、学生自身も感じているように、新型コロナウイルスの流行により、心身ともに様々な影響が出ているものと思われる。
 便秘症は、便塊による閉塞症状として腹痛、膨満感、不快感が出現する。慢性的になると便秘を意識する・しないに関わらず、イライラ、集中力低下などの様々な精神心理症状が出現する。
 排便困難の症状、自宅外で便意が出ることの危惧もこれを増強する。今回の高校生の調査では、勉学中の集中力低下が便秘症群で多く、その際の心身症状もかなり強く、本来の勉学に影響が出ている可能性がある。
 便秘がこれらの諸症状の原因である可能性もあるが、排便状態は生活全般の結果であることから、便秘が生活全般の不調のサインであるといえる。
 なお、便秘状態群のうち自分を便秘と認識していない人は26.2%で、便秘の基準にあてはまらないが便秘と思っている人は27.7%と、便秘についての情報は不足していると思われる。
 東大生については、振り返りの調査で、高校生調査と一律に比較はできない。だが、受験時に集中できたという人の割合が高く、また、基本的生活習慣が実行できていた人が多いため、その重要性が確認できる結果となった。(基本的生活習慣は排便状態に結びつくので、便秘が少ない結果となっている可能性が高い)
 勉強の合間に食べているものとして菓子類が多いが、便通改善に良いとされる食品(菓子)で取りたいものの第1位に高カカオチョコレートが挙げられている。便秘改善作用もあり、適切な量なら手軽で良い選択と言える。
 以前から日本トイレ研究所で行ってきた複数回の小学生調査では便秘症は約20%であった。一般的に成長でよくなると考えられている便秘が、高校生でこれだけ多ければ、小児期の便秘がそのまま持ち越している可能性があり、小児期からの啓発、治療をもっと進めるべきと考える。

【日本トイレ研究所の考察】

 高校生の約5人に1人(20.2%)が便秘状態が疑われるという結果になった。また、便秘予備軍(27.0%)も合わせると約2人に1人(47.2%)が便秘ケアが必要と判明した。
 アンケート調査のため、「便秘が疑われる」という結果にとどまるが、かなり多いと感じている。新型コロナウイルス感染症の流行により、学校行事の中止や部活動の制限、友達と遊びに行くことが減ったため、運動不足だけでなく精神的なストレスも排便に悪影響を及ぼしている可能性もある。
 排便に関する認識については、自身を便秘だと認識していないにも関わらず便秘状態が疑われる人が26.2%いた。便通改善に良い飲食料品として、食物繊維を含むものを回答した割合が低く、正しく認識できていないことが課題となっている。
 排便は、他人の状態を知る機会がなく、日常的な話題になりづらいため、正しい情報を得にくいのが現状である。便秘を放置したり、適切な治療を行わないと、慢性化して成人期に移行しやすいと言われている。
 慢性的な便秘は生活の質の低下を招くのは既に示されており、とくに高校生における集中力の低下は、学習・部活動等への影響も危惧される。
 これまでに当団体が実施した小学生の排便に関する調査では、低学年の方が便秘状態を疑われる割合が多く、高学年になるにつれて改善する傾向が見受けられた。心身の成長と栄養バランスのよい学校給食が排便状態改善に好影響を与えていると考えられる。
 だが、今回の高校生の結果からみると、その後の食・生活習慣により排便状態が悪化することが分かった。
 排便は、自身で意識して日頃からケアすることが重要で、便秘が心配される場合は早めの対応が求められる。そのためには、排便に関する正しい情報の提供が不可欠である。高校生活は、身体づくりをするうえでの大切な準備期間でもある。よりよい排便習慣は健康的な生活を送る上での礎になります。食事・睡眠・運動とのつながりを含め、排便に関する情報発信がより重要になると考える。

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