AIを用いたタンパク質結晶構造評価技術確立  田辺三菱製薬

 田辺三菱製薬は20日、AIを用いてタンパク質結晶構造を評価する技術QAEmap(Quality Assessment based on Electron density map)を確立したと発表した。同研究は、三井情報、横浜市立大学 池口満徳教授、理化学研究所および京都大学研究グループとの共同研究によるもの。
 今回の研究成果のポイントは、①AIを用いてタンパク質結晶構造をアミノ酸単位で評価する技術であるQAEmapの確立(アミノ酸単位でタンパク質結晶構造を機械学習することで、細かい単位での評価ができる。全体構造ではなく、局所構造評価ができる点がメリット)、②低解像度データからの構造解析で、特に構造決定が難しいループ領域の構造決定に適用できる、③創薬研究での課題を、アカデミア、IT企業、製薬会社が一体となって取り組んだ産学連携の成果ーなど。
 タンパク質の立体構造は、X線結晶構造解析あるいはクライオ電子顕微鏡によって原子レベルの構造決定がなされるが、データの解像度が構造決定の確度に大きな影響を与える。
 タンパク質の立体構造は、薬剤候補化合物と標的タンパク質との結合様式を見る創薬研究や分子シミュレーション研究の基盤となるため、特に低解像度データからの構造決定は長年の課題となっている。
 同研究では、公共データベースに登録されている高解像結晶構造データを、3D-CNNと呼ばれる3次元情報を扱う方法で機械学習することで、データの解像度に依存しない構造評価が可能になった。
 QAEmapの使用により、低解像度データからでも確度の高い構造予測が可能で、高解像度データを得るために必要な実験回数を削減でき、創薬の時間の短縮が期待できる。
 また、QAEmapは、タンパク質に結合する化合物の結合様式評価や、近年、創薬分野での利用が急速に広がっているクライオ電子顕微鏡を用いたタンパク質構造解析に応用可能で、タンパク質構造を用いる創薬研究の加速化に貢献する。
 今後は、従来の実験者の経験や技術に頼って行われてきたタンパク質の構造決定に、AIを取り入れた方法としてさらに発展させていく。
 同研究は、LINCの活動の一環として田辺三菱製薬が提案したプロジェクトで実施され、研究成果は『Scientific Reports』に論文掲載された。なお、2022年度もLINCでプロジェクトが継続される予定だ。

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