田辺三菱製薬は7日、 カナダの連結子会社メディカゴ社が開発する新型コロナVLPワクチンMT-2766について、P2/3相臨床試験の第3相パートにおいて変異株が優勢な環境下でも良好な有効性と安全性を確認したと発表した。なお、MT-2766は、グラクソスミスクライン社(GSK)のパンデミックアジュバントを併用している。
独立データモニタリング委員会(IDMC)は、この結果を受け、進行中のP2/3相臨床試験を変更せずに継続することを推奨した。カナダにおいては、今後速やかに承認申請を行う。カナダで承認されれば、世界初の承認となる。
日本においても、P1/2試験を本年10月から実施中で、今回得られた結果に日本の臨床試験結果を加えて、来春の承認申請をめざしている。今後、WHO、米国、英国への承認申請も行う予定。
メディカゴ社は、MT-2766について、2万4000人以上の治験参加者を対象にしたP2/3試験の第3相パートの投与を終了し、今回、中間解析を行った。同第3相パートの中間解析により得られた結果の概要は、次の通り。
【試験概要】
実施国:カナダ、米国、英国、メキシコ、アルゼンチン、ブラジルの計6か国
被験者:2万4000人(18才以上)をMT-2766群、プラセボ群に無作為に割り付け
用法用量:VLPワクチン3.75μgとGSK社のアジュバントを併用し21日間隔で2回筋肉内投与
評価項目:発症予防の有効性と安全性
【中間解析結果】
同試験実施期間中は主に変異株(オミクロン株を除く)が流行しており、同試験で認められた発症例はすべて変異株だった。すべての変異株におけるMT-2766のプラセボに対する有効性は71%。
変異株毎の有効性は、デルタ株、ガンマ株において、それぞれ75.3%、88.6%。アルファ株、ラムダ株、ミュー株については、プラセボ群では12例の発症例が認められたが、MT-2766投与群では発症例は認められなかった。
SARS-CoV-2ウイルスに対する抗体を持たない被験者に対する有効性は75.6%
MT-2766投与に関連する重篤な副反応は見られず、その程度は軽度から中等度であり、持続期間も平均で1~3日であった。軽度の発熱の頻度は、2回目の接種後でも10%未満と低かった。
MT-2766は植物を用いて製造したVLPを使用しており、承認されれば、ヒト用植物由来VLPワクチンとして世界初になる。また、冷蔵(2~8℃)での保存・流通が可能だ。
同社グループは、中期経営計画21-25において、ワクチン領域を、中枢神経・免疫炎症領域とならぶ重点領域と位置付け、ワクチン領域においても新しいモダリティの開発に取り組んでいる。すなわち、新しいタイプのワクチンとなる植物由来VLPワクチンという新たな選択肢を届けることで、世界の最重要課題である感染症予防により一層貢献していく。