高血糖・高脂血症・肥満予防目的の機能性食品への応用が期待
岐阜大学教育学部家政教育講座 久保和弘教授らのグループは、美健産業(名古屋市)との共同研究で、富山県産の天然ゼオライトが肥満モデルマウスの高血糖・高脂血症・肥満を改善することを発見したと発表した。また、ゼオライトの高い安全性も確認した。
ゼオライトの食物繊維のような機能性成分は、今後、高脂肪食に伴う高血糖・高脂血症・肥満予防を目的とした機能性食品への応用が期待される。同研究成果は、6日、Journal of Nutritional Science and Vitaminology誌のオンライン版で発表された。
地殻中の豊富なミネラルである天然ゼオライトは、イオン交換特性をもつアルミノケイ酸塩で、構造空孔の微細なネットワークをもち、共通の酸素原子を通して連結している。それらは、選択的に水を吸着して、カチオンを交換する。
このような機能特性を利用して、工業におけるイオン交換剤や触媒、農業における土壌改良剤、公衆衛生における水質浄化剤、環境保全における資材など様々な用途に活用されている。 これまでに知られている天然ゼオライトは安価で、毒性を示さず、環境汚染を引き起こさないことが報告されている。ゼオライトは、そのよく知られた吸着特性によって整腸作用や有害物質の吸着排出効果等が期待されることから、家畜の飼料添加剤としても活用されている。
消化管から吸収されないので、食物繊維のような機能性食品成分として、過剰な糖質や脂質の吸収を抑制し、延いては肥満等を予防することにも繋がると期待される。だが、生活習慣病予防の観点からの研究報告はなかった。
そこで、久保教授らは、生活習慣病予防を目的とした食品の開発への応用を目的として、最初に、天然ゼオライトの安全性について検討(急性経口毒性試験)した。次に、高脂肪飼料摂取に伴う肥満・2型糖尿病に対する天然ゼオライトの有効性について検討(長期摂取試験)。
さらに、富山県八尾層群の火成岩由来のゼオライト(平均粒径約100µm)が、肥満モデルマウスの高血糖・高脂血症・肥満を改善することを発見した。
急性経口毒性試験において、ゼオライト2,000mg/20mL/kg体重(比較する対照群へは生理食塩水20mL/kg体重)の投与量を単回経口投与し、14日間の観察、および、観察終了後に全ての動物の剖検を実施した結果、使用された動物のいずれも異常および死亡が観察されず、ゼオライト摂取群と対照群の体重にも差が認められなかった(表1)。
高脂肪飼料(30kcal%脂肪)を用いた長期摂取試験(18週間)において、飼料摂取量(図1)、摂取エネルギー量、飲水量および初体重には差がないにも関わらず、体重増加量はゼオライト摂取量依存的に抑制され、ゼオライト0%群に比べてゼオライト10%群で有意に抑制された(変曲点は10週目)(図2)。
このとき、肝臓、精巣上体脂肪(内臓脂肪)および腎周囲脂肪(内臓脂肪)の重量は、ゼオライト摂取量依存的に低下し、前二者はゼオライト0%群に比べてゼオライト10%群で有意に低下した(表2)。
長期摂取試験の12週目に実施した経口ブドウ糖負荷試験において、空腹時の血糖値(図3、(0分)とインスリン濃度(図4、0分)、および、ブドウ糖投与後の食後血糖ピーク(図3)とインスリン分泌量(図4)が、ゼオライト摂取量依存的に抑制され、ゼオライト10%群はゼオライト0%群に比較して、すべての測定点で有意に低下した。
血漿の中性脂質と総コレステロール、および、非HDLコレステロール/HDLコレステロール比もゼオライト摂取量依存的に低下した(表2)。これらの結果にうより、ゼオライトの高い安全性および有効性が確認されました。
ゼオライトの有効性は、食物繊維がもつ消化管吸収の調節作用に似ていると考えられ、今後、高脂肪食に伴う高血糖・高脂血症・肥満の予防を目的とした機能性食品への応用が期待される。