トレーシングレポート

 8月の最初に地域連携薬局の認定をいただいたことでインタビューを受けました。小さな個人薬局の認定例が少ないので知人が紹介をしてくださったことがきっかけです。インタビューでは、特に『地域の医療機関との協力や連携をする方法』についてフォーカスされました。改めて考えますと、医療機関との連携にトレーシングレポートが大きな役目を果たすことがわかりました。具体例を紹介させていただきます。
 日祝日や処方医の休診日に患者さんやご家族から問い合わせがあります。「先日からSSRIの量が2倍に増えて眠気があり通学に支障をきたすため服用を止めさせているが、どうすればよいでしょうか?」とお母さまが心配されて電話をくださいました。
 「2倍になる前の眠気はどうでしたか?処方されたお薬をやめてしまうと症状の悪化や別の副作用の発現の可能性があるので、飲むのをやめてしまわないで、とりあえず元の量で服用をお願いします。お休み明けに処方医に電話をかけ、指示を受けてください」と伝えました。その内容のトレーシングレポートを作成しFAXを送りました。次回の処方は元の量に戻り、経過観察中です。
 高齢の独居の男性が日によってはかなり認知機能低下の症状があり、「普段よく行くコンビニやデパートの場所が分からない」、「飲む薬がない」と相談に来られました。
 相談というにはあまり穏やかではなく、薬局にクレームを言いに来られたという様子でした。前回の来局日から換算するとまだ薬は十分にあるはずでしたので、これは重複服用または紛失されたおそれがあるため、処方医に連絡をすることにいたしました。
 トレーシングレポートを作成しその旨を伝え、処方提案もさせていただきました。後ほど処方医から電話連絡があり、認知機能の低下についてドクターも同じように思われていたことを伺い、「今後の対応については7日間投与にする」ことや「訪問看護師の開始など治療方針」をお示しいただきました。処方にドネペジル塩酸塩錠も加えていただき、症状は少し安定されています。
 トレーシングレポート作成をルーティンにしているのは実務実習生を受け入れていることにも関係があります。疑義照会の記入はひな形がありますが、トレーシングレポートとなると、内容を正しく簡潔に示し、文章は処方医にも患者さんにも敬意を払うことが必要となります。
 実習生は前例を参考にして書き上げています。作成数の経験が増えると完成度も高くなり、それらをファイルした件数が在宅関連の報告書の半分ぐらいになって、今回の認定条件の一つを満たすことができました。
 そうして連携をできるようになった機関から重い経腸栄養剤の配達や居宅療養管理指導の依頼を受けることもあり、次々に連鎖して地域連携ができていると思います。顔認証のシステムの導入など新しいことも進む一方で、手書きの文章の作成や、人とのふれあいなどシステムを使わない行為も必要で大事なことであると、日々の業務の中で患者さんや周りの人たちから教えていただいています。

              薬剤師 宮奥善恵

タイトルとURLをコピーしました