後発品メーカーの法令順守・製造備蓄能力の精査を強く要望  大阪府薬

後発医薬品の品質や安全性に大きな不安・不満

乾会長

 大阪府薬剤師会は18日、定例記者会見を開催し、9月13日~25日までの間、会員薬局の管理薬剤師・開設者を対象としたWebによる「後発医薬品に関する流通及び対応状況に関する調査」結果を報告した。

 調査結果では、後発品メーカーのGMP遵守違反による頻繁な後発品の販売停止・回収等で医薬品供給がままならない現状下において、希望した後発医薬品が発注通り納品されている薬局はわずか1%未満で、92%もの薬局が供給不安定で調剤業務に影響が出ていることが判明。
 加えて、患者は、服用している薬剤を中止、中断せざるを得ないケース(ビタミンD3製剤)も多数発生しており、患者及び医療従事者が後発医薬品の品質や安全性に大きな不安・不満を抱いていることが浮き彫りになった。
 これらの調査結果を踏まえて乾英夫会長は、「国・都道府県が認める医薬品製造販売の許可、各後発品メーカーの法令順守、製造能力、備蓄能力について、改めて精査して行かねばならない」と強く要望。さらに、こうした状況下において全ての患者に過不足なく対応する一つの方策として、「薬局薬剤師の判断による分割調剤の実施」を提案した。
 これらの調査結果は「調査報告書」としてまとめられ、同日、厚労省医政局長、同医薬・生活衛生局長、大阪府知事、日本ジェネリック製薬協会会長、日本製薬団体連合会会長、大阪府医師会長らに送付された。
 昨年12月、小林化工が製造した抗真菌薬(爪水虫治療薬)への睡眠導入剤成分の混入から端を発し、日医工の業務停止など各後発品メーカーのGMP遵守違反が次々と明らかになり、後発品の販売停止・回収等が頻繁に実施されている。10月1日現在、日本ジェネリック製薬協会は、「1749品目もの後発品が供給調整されている」と報告している。
 当初、日医工の業務停止を受けて抗アレルギー剤の不足が多かったが、その後、降圧剤や、ビタミンD3、骨粗鬆症薬などの不足にまで影響が拡大。今や、後発品不足は、それに替わる先発品不足も相まって、医薬品供給がままならない深刻な状況下に陥っている。
 こうした中実施された大阪府薬の「後発医薬品に関する流通及び対応状況に関する調査」での主な調査結果は次の通り。
 
 ◆現在の卸の納入状況(1544名が回答)は、「発注通りに納入されている」はわずか1%で、「発注通りではないが調剤に影響が出ない範囲で納入」が8%、「納入が滞り、調剤業務に影響が出る場合がある」68%、「製品が流通していないため発注ができない場合が多くある」24%となった。
 ◆納品が滞るあるいは発注できない製品についての卸担当者からの説明理由(複数回答可、回答数1047件、以下同)は、「卸に在庫はあるが、販売実績などで販売先が指定されており納品できない」が61.0%、「発注量の一部は納品できるが、不足分は入荷次第」83.8%、「卸の在庫がない」88.0%。
 ◆現在納品が滞っている品目数(回答数1047件)は、「5~9品目」16.2%、「10~19品目」29.3%、「20~29品目」10.6%。
 ◆納品が滞っている後発品の薬局での対処方法は、「複数メーカーの後発品を購入して患者ごとに使い分けしている」78.6%、「後発品から先発品への変更」92.6%、「普通錠からOD錠へ変更」52.2%、「規格を変更」40.4%
 ◆入手困難な先発品の品目数は、「0品目」11.0%、「1品目」18.4%、「2品目」21.2%、「3品目」19.6%、「4品目」9.2%。「5品目」7.3%、「10品目以上」7.4%。
 ◆入手困難な後発品の銘柄(一般名)は、「ビソプロロール(降圧薬)」59.0%、「アルファカルシドール(ビタミンD3製剤)」55.2%、「オロパタジン(アレルギー性鼻炎等)」54.7%、「エルデカルシトール(骨粗鬆症薬)」49.3%。
 ◆入手困難な先発品の銘柄(商品名)は、「アレロック(アレルギー性鼻炎等)」64.2%、「メインテート(降圧剤)」44.1%、「エディロール(ビタミンD3製剤)」35.2%

羽尻氏

 同調査担当役員の羽尻昌功常務理事は、「設問事項は、6月に実施された東京都薬の調査と比較するため同項目にした」と説明。その上で、「4品目以上不足は、東京都薬の調査では64%、大阪府薬では80.0%で、医薬品供給がままならない状況はより深刻化している」と警鐘を鳴らした。
 また、ビタミンD3製剤は品不足のため、「医師と相談して投与を中断している患者も存在する」現状も報告した。
 乾氏は、「医薬品の供給がままならない中、薬局では、薬剤師が懸命な対処をしてなんとかやり繰りをしている。今のところ、大した混乱が起こってないのは、薬局・薬剤師の尽力によるところが大きい」と訴求した。

 道明雅代副会長も「後発品から先発品の変更では、一部負担金も異なるので、薬局できちんと説明している」と強調。尾島博司副会長(大阪府薬剤師連盟会長)は、「この状況が何時まで続くのか目途が立っていないのが大きな問題である」と指摘した。
 また、アンケートに応じた薬剤師からは、「後発品を普及させるために国が精査してから後発品の普及を促すべきであった」、「国が薬価を下げて各社に作らせたしわ寄せが来た。どの後発品メーカーも同じような品質管理だったと感じた。後発品のイメージは確実に下がった」、「やむを得ず後発品から先発品に変えた時の患者負担の差額は、問題のメーカーが負担すべき」、「後発品の変更により患者から体調の変化が起こったとの訴えがあった」、「CMを出すお金があるなら出荷調整している薬剤を早く作ってほしい」などの声が寄せられた。
 乾会長は、「今回の調査結果を踏まえ、こうした事態が一日も早く解消されるように関係各位に迅速かつ適切な対応を説に要望する」と訴えかけた。
 乾氏は、薬局での‟医療用新型コロナ抗原キット販売”にも言及し、「地域住民に対して、安心・安全に販売できるようにするための情報提供を周知徹底していく」考えを示した。

尾島氏


 尾島氏は、第49回衆議院議員選挙候補者に対して、政策協定書の中に「新型コロナ感染症に係る医療従事者への慰労金の支給対象に薬剤師を含める」を加えて協定書を締結し、大阪府薬連盟として推薦・支援していることを報告した。
    

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