ロート製薬は28日、30代から60代の男性を対象に在宅勤務時と出社勤務時を比較した体臭研究を実施し、在宅勤務時の方が加齢臭が強いことを発見したと発表した。活動量が低いほど加齢臭が強まる傾向を確認しており、‟外出しないときもしっかりとしたニオイケア”の重要性を訴求している。
ロート製薬では、「Connect for Well-being」の実現に向けた挑戦のひとつとして、体臭の研究をすすめている。今回、男性の活動シーンの違いと体臭の関係の研究を進めた結果、30 代後半~60代前半の男性において、在宅勤務時の方が出社勤務時に比べて加齢臭と油臭が強くなり、加齢臭と油臭の関連成分の量も増えていることの発見に至った。なお、同研究内容は日本味と匂学会第 55 回大会(2021 年 9 月 22 日)で発表された。
昨今定着しつつある在宅勤務に関してロート製薬がヒアリングを実施したところ、在宅勤務を行っている家庭内で、パートナーから加齢臭を指摘されたという声があった。季節や年齢の違いによる体臭の変化はすでに知られているが、生活シーンの違いによる体臭の変化に関しては、知見はまだ多くない。
在宅勤務時と出社勤務時では仕事環境、主に活動量の大きな差異が想定されるため、発生する体臭の質も変化している可能性があるとの視点から、出社勤務時と在宅勤務時の体臭挙動の違いを確認することを目的とし研究を実施した。
研究成果のポイントと研究の詳細、考察は、次の通り。
【研究成果のポイント】
◆ 在宅勤務時の方が出社勤務時と比較し加齢臭が強くなることを発見
◆ 在宅勤務時は、活動量が低いため汗や皮脂量も少なくなり、体臭としては弱くなると予測されたが、出社勤務時と比較し加齢臭と油臭の発生量が多いことが判明
◆ 活動量が少ない就寝時においても加齢臭の発生量は多くなることを確認
◆ 男性向けのニオイケア製品への応用に期待
【研究の詳細】
1)在宅勤務時の方が出社勤務時と比べ、加齢臭と油臭が有意に強くなることを確認では、30代後半~60代前半の男性 10 名で、臭い採取用のTシャツを着用して1日は在宅勤務を、1 日は出社勤務を行い、専門家パネラー10 名によって 6 段階臭気強度表示法を用いて官能評価を実施した。
その結果、活動量は在宅勤務時の方が少なく、体臭の強さは在宅勤務時と出社勤務時では変わらなかった。一方で体臭の質は変化しており、加齢臭と油臭は在宅勤務時の方が強くなることが分かった(図 1)。
2)加齢臭と油臭の指標成分の2-ノネナール、2-エチルヘキサン酸は在宅勤務時の方が多く検出され、官能評価の結果と同じ傾向を確認加齢臭の指標成分として2-ノネナールを、油臭の指標成分としてカプロン酸、2-エチルヘキサン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、デセン酸を、汗臭の指標成分として酢酸の分析を行った。その結果、在宅勤務時の方が、2-ノネナール,2-エチルヘキサン酸が多く検出された。官能評価の結果と同傾向が確認された。今回有意差のついた成分の分析結果を提示した(図 2)。
3)活動量の最も少ない就寝時の2-ノネナールの単位時間当たりの検出量は多いことを確認活動量の違いが原因となり体臭の質が変化していたのか、より詳細に探るべく、活動量が 1 日のうち最も少なくなる就寝時の体臭挙動を確認した。
体臭成分として一般的に知られている 2-ノネナールを分析した結果、就寝時の 2-ノネナールの単位時間当たりの検出量は多くなる傾向を確認した(表 1)。
【考察】
同研究において、在宅勤務時と出社勤務時の体臭挙動を比較した結果、在宅勤務時の方が加齢臭と油臭は強く、今回の試験においてはその原因成分が 2-ノネナールと 2-エチルヘキサン酸であることが示唆された。
また、就寝時の体臭挙動を確認した結果、2-ノネナールの単位時間当たりの検出量は多くなる傾向を確認した。
一般的には活動量が多い方が汗や皮脂の量が増えるため、加齢臭などが強くなることを予想していたが、今回の試験では逆の結果、活動量が少ない方が加齢臭は強くなることが示唆された。
以上の結果から、在宅勤務時の増加など活動量が少なくなっている昨今については、加齢臭対策のできるデオドラント製品やボディウォッシュ等の洗浄剤の必要性が高まっていると考えられる。今後は原因の究明を進めることで、多方面から新たな加齢臭の対策方法を検討していく。