FDAが初の経口非小細胞肺がん特異的治療薬EXKIVITY承認  武田薬品

 武田薬品は16日、初めての経口非小細胞肺がん特異的治療薬EXKIVITY(mobocertinib)について、FDAより承認を取得したと発表した。対象疾患は、プラチナ製剤ベースの化学療法を実施中あるいは実施後に病勢が進行し、FDAが承認した検査で検出された上皮成長因子受容体(EGFR)エクソン20挿入変異を伴う局所進行または転移性非小細胞肺がんの成人患者。
 EXKIVITYは、FDAにより優先審査に指定され、Breakthrough Therapy指定、Fast Track指定、およびOrphan Drug指定を受けた、EGFRエクソン20挿入変異を標的とするよう特異的に設計された初めてかつ唯一承認を取得した経口治療薬だ。
 同承認は、奏効期間の中央値約1.5年という臨床的に意義のある奏効が示されたP1/2相試験の結果によるもので、奏効率(ORR)と奏効期間(DoR)に基づき、迅速承認制度のもとで承認された。同適応症の継続的な承認は、検証試験における臨床的有用性の確認と説明が条件となる。
 P1/2相試験は、プラチナ製剤ベースによる治療歴を有するEGFRエクソン20挿入変異を伴う非小細胞肺がん患者114人を対象に、EXKIVITY 160 mgを1日1回投与してプラチナ製剤による前治療を受けた患者集団を解析したもの。

 同試験結果は、2021年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表され、独立審査委員会(IRC)による全奏効率(ORR)は28%(治験担当医師による全奏効率は35%)、IRCによる奏効期間(DoR)の中央値は17.5カ月、全生存期間(OS)の中央値は24カ月、IRCによる無増悪生存期間(PFS)の中央値は7.3カ月であった。
 最も頻度の高かった治療に関連する有害事象(20%以上)は、下痢、発疹、悪心、口内炎、嘔吐、食欲減退、爪囲炎、疲労、皮膚乾燥、筋骨格痛であった。 「EXKIVITY Prescribing Information」において、QTcの延長および心室性頻脈の一種であるトルサード・ド・ポアントに関する枠組み警告(Boxed warning)、間質性肺炎/肺臓炎、心毒性および下痢に関する警告ならびに使用上の注意が記載されている。
 同審査は、FDAのオンコロジー・センター・オブ・エクセレンス(腫瘍研究拠点:OCE)が主導するProject Orbisのもとで実施されており、同プロジェクトは参加国における抗がん剤の同時申請・同時審査の枠組みを提供するものである。

患者診断支援のためのコンパニオン診断薬も同時承認

 FDAは、EGFRエクソン20挿入変異を伴う非小細胞肺がん患者特定のため、EXKIVITYの次世代シークエンサー(NGS)であるコンパニオン診断薬として、ThermoFisher Scientific社のOncomine Dx Target Testも同時承認した。
 NGSを用いた検査は、EGFRエクソン20挿入変異の検出率が50%未満であるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査よりも正確な診断ができるため、患者には不可欠だ。
 武田薬品は、世界中の規制当局と継続的に連携し、mobocertinibを患者に届けられるよう取り組んでいく。

◆武田薬品はグローバル オンコロジー ビジネス ユニットプレジデントのテレサ・ビテッティ氏のコメント
 EXKIVITYの承認によって、EGFRエクソン20挿入変異を伴う非小細胞肺がん患者さんに新しい有効な治療選択肢が提供され、この治療困難ながんに対する差し迫ったニーズの充足を目指す。
 EXKIVITYは、EGFRエクソン20挿入変異を標的とするよう特異的に設計された初めてかつ唯一の経口治療薬であり、特に奏効期間の中央値は約1.5年という期間が示されたことを嬉しく思う。
 本承認は、オンコロジー領域で十分な治療を受けられない患者さんのニーズを満たすという当社の取り組みを強化する節目となるものである。

◆ダナ・ファーバー癌研究所のPasi A. Jänne医学博士のコメント
 EGFRエクソン20挿入変異を伴う非小細胞肺がんは、従来のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬では効果的に標的にすることができず、十分な治療が行えないがんである。
 EXKIVITYの承認により、このような患者さんを対象として特異的に設計され、臨床的に意義のある持続的な奏効が示された新たな経口治療薬を医師や患者さんにお届けする重要な一歩となる。

◆International Cancer Advocacy Network Exon 20 Group Executive DirectorのMarcia Horn氏のコメント EGFRエクソン20挿入変異を伴う非小細胞肺がん患者さんは、これまで、診断が不十分であるだけでなく、奏効率を改善できる標的治療薬の選択肢がない、非常にまれな肺がんを抱えて生活するという特有の課題に直面してきた。
 EGFRエクソン20挿入変異を有する患者さんやその家族と5年近く毎日向き合ってきた支援者として、私はこの重篤な疾患との闘いに継続的な進歩がみられることを喜んでおり、この有望な標的治療薬の承認に貢献した世界中の患者さん、家族の皆さん、医療従事者、そして科学者の皆さんに感謝している。

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