陽子線がん治療装置用の小型スキャニング電磁石の開発に成功  ビードットメディカル

陽子線がん治療装置の小型化と高精度照射技術の普及に期待

ビードットメディカル(本社:東京都)は30日、開発中の小型陽子線がん治療装置について、自社で設計製造したスキャニング電磁石の通電試験を実施し、電源との組み合わせにより磁場の発生を確認したとことを明らかにした。
 今回、陽子線がん治療では初めてとなる、小型で高速走査が可能なスキャニング電磁石の製造を完了した。今後、ビードットメディカルでは、陽子線がん治療装置の高速スキャニング照射および呼吸同期照射の実現を目指して、薬機承認申請に向けたビーム試験を進めていく。

Lung cancer, computer illustration.
スキャニング照射のイメージ


 近年、陽子線治療では、スキャニング照射という照射方法が一般的に使用されている。スキャニング照射とは、細い陽子線ビームを腫瘍形状に合わせて走査する照射方法で、腫瘍周囲の正常な組織や臓器へのダメージを低く抑えることができる。
 また、呼吸に伴って位置が変動する腫瘍(肺、肝臓など)へ照射を行うためにはビームを正確かつ高速に走査する必要がある。
 ビードットメディカルでは、今回、陽子線がん治療では初めてとなる、小型で高速走査が可能なスキャニング電磁石の製造を完了した。従来は、腫瘍に対して水平方向と垂直方向にビームを走査するために2台の電磁石と長い距離が必要であったが、今回開発した電磁石では1台で両方向の走査を行い、照射機器から照射位置までの距離を従来の約1/3まで短縮することに成功した。
 大幅に小型化したスキャニング電磁石だが、高速に走査する機能については従来と同等以上の水準であり、呼吸に伴って位置が変動する腫瘍へ照射を行う呼吸同期照射への対応も可能だ。

スキャニング電磁石の通電試験風景


 今後は、既に開発を完了している超伝導偏向電磁石と組み合わせて、薬機承認申請に向けたビーム試験へと進めていく。同社では、より高度ながん治療を、より多くの患者に届けるべく、薬機承認と製品化に向け加速していく。

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