小野薬品の相良暁社長は17日、大阪市内のホテルで開かれた第73回定時株主総会で、本庶佑京大特別教授からのオプジーボの対価をめぐる訴訟について説明した。相良氏は、「本庶先生とは、いたずらに対立を望むものではないが、当社に対するロイヤリティの請求は容認しがたい規模のものであり、株主の利益を損なうことにもなりかねない」と指摘。
その上で、「まずは、裁判所で適切な主張を行い、裁判所の理解を得たい」との考えを示した。
裁判の見通しでは、「当社の正当性が認められると考えている。そのために今後も適切に当社の正当性を主張していく」と断言した。
今後の和解の可能性については、「現在のところ難しく、低い」とした上で、「だが、条件によっては、慎重に検討していきたい」と語った。
相良氏は、まず、本庶氏とのオプジーボの契約について、「2006年に本庶先生と正式に交渉して、ライセンス契約を有効に締結している。契約に基づき本庶先生個人に約53億円のロイヤリティを支払っており、今後も支払いを続けるため総額120億円を超える見込みである」と報告。
さらに、「当時、癌免疫療法は、懐疑的な見方をされており、どの製薬会社も引き受けなかった。当社だけが大きなリスクを背負ってオプジーボの臨床開発に乗り出し、そして成功した。当社の思い切った決断とその貢献でオプジーボを世に出すことができたと自負している」と力説した。
本庶氏は、「オプジーボの成功が見えてきた2011年頃から、ロイヤリティの大幅な増額を要求するようになった」という。
小野薬品では、本庶氏や京都大学への配慮、産学推進の観点から、「誠意をもって交渉してきたが、余りにも法外な請求や、いわれのない非難を受けたために交渉が決裂し、今回の訴訟に至った」
相良氏は、「まずは、裁判で適切な主張を行い、裁判所の理解を得たい」と述べ、「裁判は、当社の正当性が認められると考えている」との見通しを語った。さらに、産学連携、医学会への貢献では、「製薬企業の使命のもと、適切に実施していきたい」と訴求した。
相良氏は、オプジーボの薬価引き下げにも言及し、その要因として、①オプジーボ自身の売り上げ増加、ならびに②オプジーボと競合類似品の売上拡大による薬価引き下げの影響-を挙げた。
①については、「今、オプジーボの売上高は1000億円前後であるが、次の薬価引き下げは2000億円を超えたところにハードルがある。2000億円超での薬価引き下げはマイナス要因であるが、業績はプラスになる」と明示した。
②では、「今回、競合品の薬価引き下げに伴いオプジーボも下げられた。オプジーボの競合品は4つあるがそのうち2つは薬価引き下げのハードルを越えた。薬価引き下げ反対意見陳述の権利もあり確実ではないが、残り2つの競合品の再算定時に影響を受ける可能性もある」と指摘。
その上で、「残り2品の競合品の状況を注視しているが、当面、大きな効能追加や売上拡大はないのではないか」との見通しを示した。