AIと家庭計測による脳・心血管疾患発症予防目指した「健康医療AI講座」スタート 京都大学とオムロンヘルスケア

左から奥野氏、濱口氏

 京都大学とオムロンヘルスケアは、1日より京都大学構内にAI(人工知能)解析技術と今までにない革新的な家庭計測データを用いた共同研究「健康医療AI講座」(研究代表者:奥野恭史京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻教授)を設置し、AI技術と家庭計測で、脳・心血管疾患の発症予防を目指す。設置期間は、2021年6月~2024年3月まで。
 同講座の設立は、京都大学のAI解析技術と オムロンヘルスケアの強みである生体センシング技術を融合することで、「脳・心血管疾患の発症ゼロ(ゼロイベント)」実現のさらなる前進を目的としたもの。
 同講座では、日常生活における日中および夜間の血圧変動、家庭で記録した心電図データや生活習慣データから、個人に最適化された新たな血圧改善方法を導き出すAI技術研究に取り組み、血圧改善率のさらなる向上を目指す。
 加えて、家庭で計測した様々なバイタルデータの変化から、脳・心血管疾患の発症の予兆を、高い確率で、より早く検知するAI技術研究を進める。これにより、脳・心血管疾患の重症化予防を実現する。
 現在、世界の死亡リスク要因は「高血圧」が多いといわれている。また、これらの脳・心血管疾患は、発症後に寝たきりや介護を要する状態になるなど、生命リスクだけでなく生活の質の低下の側面からも発症予防が求められている。
 日本では、3人に1人が高血圧を罹患しており、国内の高血圧有病者数は推計で約4300万人、そのうち29%は、治療を受けているが血圧値を改善できていない。
 心血管イベントを防ぐためには、血圧値の改善に悩む患者のために、さらなる施策が必要だ。また、血圧値が改善出来ている患者の場合でもイベントが確認されている。日々の健康管理におけるイベント予兆検知による早期発見、治療介入も注視すべき健康課題といえる。
 そこで、同講座では、京都大学とオムロンヘルスケアとの連携体制のもと、2つの研究テーマに取り組む。1つめのテーマは、高血圧患者の血圧値改善のための新たな血圧管理方法の創出だ。日常生活におけるバイタルデータ(体重、体組成、活動量、ナトカリ比など)と、生活習慣データ(喫煙、飲酒など)から個人に最適化された血圧管理方法を導き出すAI技術を開発する。
 2つめのテーマは、突然発症するため難しいと言われていた、イベントの早期発見に挑戦する。家庭で計測した様々なバイタルデータの変化を、AI技術を用いて解析することで、より高い確率で、より早くイベントの予兆を検知し、治療に繋げて、脳・心血管疾患の重症化予防を実現する。
 オムロンヘルスケアは、2015年から「脳・心血管疾患の発症ゼロ(通称、ゼロイベント)」を循環器疾患事業のビジョンに掲げ、ウェアラブル血圧計などの革新的なデバイスや、健康管理サービスの開発を進めてきた。
 さらに、米国や英国、シンガポールでは、家庭で計測したバイタルデータを医療従事者と共有し日々の患者の状態を詳しく確認することで、医師の治療を支援する遠隔患者モニタリングシステムも提供し、ゼロイベントの実現に向けて取り組みを広げている。

 ◆奥野恭史京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻教授のコメント

 COVID-19の医療崩壊が叫ばれる中、病院外での保健医療体制の整備が喫緊の課題となっている。このことは、超高齢化に伴う医療費高騰、医療従事者減少に直面する将来の日本の課題であると言っても過言ではない。
 健康医療AI講座では、この難問に応えるべく「家庭内の日常生活において、如何に病気の発症を未然に防ぐのか、そして、如何にして病院にかからず健康で幸せな毎日を送るのか」を追究し、新たなヘルスケア×AI研究に挑戦する。

 ◆濱口剛宏オムロンヘルスケア開発統轄本部技術開発統轄部統轄部長のコメント
 オムロンヘルスケアの血圧計累計販売台数は、グローバルで3億台を越え、世界中で愛用されている。だが、未だに血圧値が改善されず、重篤な疾患を発症される人々が世界中にたくさん存在する。
 我々は、京都大学との共同研究「健康医療AI講座」により個人の特性や生活習慣がどのように高血圧に起因しているのか、またその結果からどのような手段が血圧改善に有効であるのかを明らかにする。
 さらには、革新的な生体センシング技術とAI技術を融合し、脳・心血管疾患の発症を未然に防ぐことにもチャレンジしていく。

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