新型コロナワクチンの取り扱いについて

 市の薬剤師会で、新型コロナワクチンの取り扱いの講習会が開催されました。薬剤師が集団接種会場で分注を担います。それに備えての講習会です。
 今わかっている情報の範囲で、ファイザー社製の新型コロナワクチン接種に特化した取り扱いの方法についてです。接種会場は無菌調剤を行うには不向きな環境で、さらに使用するシリンジやバイアルも小さく、取り扱いにくいものです。そのような状況で、できるだけ簡単で必要十分な方法を学びました。
 まず、安全性が保たれる温度はマイナス60°Cからマイナス90°Cのディープフリーズで6ヶ月、マイナス15℃からマイナス25℃の冷凍状態で14日間、2℃から8℃の冷蔵状態で5日間、室温で2時間です。直射日光は完全にブロックし室内照明も避けるため、調整が終わったバイアルやシリンジは光を遮るようにします。また薬液を優しく取り扱うことで、酸化分解を低減できます。
 手指消毒、環境消毒を消毒用エタノールを使い十分にしてから作業にはいります。ワクチンのバイアルは冷蔵庫から取り出し、30分間室温に戻します。解凍後は2時間以内に希釈し、希釈後は6時間以内に接種します。
 バイアルをゆっくり10回転倒混和、バイアルのキャップを取り除き、ゴム栓部分をアルコール綿で清拭、消毒し、生食の開栓部を消毒したのち、開栓します。シリンジに生食1.8mlを正確に計量し、バイアルに注入します。内圧がかからないように、1.8mlの空気を吸ってから抜針します。この時注射針はバイアル内の空気部分に位置させます。バイアルをゆっくり10回転倒混和して目視確認します。ゴム詮部分を消毒します。
 希釈したワクチンバイアルを1mlシリンジ5本、当面は1バイアルから5回分を採取します。5本のシリンジに注射針を接続し、再びバイアルのゴム栓部分を消毒します。1mlシリンジに0.3mlの空気を吸ってから、バイアルに穿刺します。穿刺場所は毎回変更し、コアリング発生を防止します。バイアルを上にして、シリンジ内の0.3mlの空気を注入します。希釈した液0.3mlを空気が入らないように正確に取り、シリンジにリキャップをします。液中に異物や変色がないことを確認してバットに入れます。
 薬局に勤める私は無菌調剤室共同利用の講習会以外では日常的にこの作業をしていないので、本番に備えてミスをしないように、毎日個人練習を繰り返しています。世界中に1日も早くワクチンが行き届くことを願って、また今回その一翼を担う重責をひしひしと感じています。

薬剤師 宮奥善恵

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