バイエル薬品は23日、経口トロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)阻害剤「ヴァイトラックビ」について、神経栄養因子チロシンキナーゼ受容体(NTRK)融合遺伝子陽性の進行・再発固形癌の治療薬として、国内製造販売承認を取得したと発表した。
ヴァイトラックビは、NTRK遺伝子融合陽性の進行・再発の固形癌の治療に特化したTRK阻害剤として開発された。TRK融合を有する成人および小児固形癌患者に対して、高い奏効割合と持続的な奏効を示し、TRK融合を有する中枢神経系原発腫瘍に対する高い病勢コントロール率を示す。
同剤は、すでに米国、英国、欧州連合(EU)諸国など世界のさまざまな国で承認取得している。
また、ヴァイトラックビの製造販売承認に際し、ファウンデーション・メディシン社により開発された遺伝子変異解析プログラム「FoundationOne(R) CDxがんゲノムプロファイル」が、本年1月22日に厚労省より適応追加の承認を取得している。
同がんゲノムプロファイルは、ヴァイトラックビの投与によって効果が期待されるTRK融合を有する癌患者を特定するコンパニオン診断。同コンパニオン診断の承認は、ドイツ・バイエル社とファウンデーション・メディシン社のグローバル提携の一環であり、中外製薬は、ファウンデーション・メディシン社の日本国内における開発パートナーだ。
日本におけるヴァイトラックビの承認は、成人および青年期の患者を対象としたP2相試験NAVIGATE、および小児を対象としたP1/2相試験SCOUTから得られたデータに基づくもの。NAVIGATE試験において、奏効率は65.2%、うち完全奏効率は16.9%、SCOUT試験においては、奏効率は88.9%、完全奏効率は22.2%であった。
NAVIGATE試験に参加した116名およびSCOUT試験に参加した73名の患者の安全性データに基づき、ヴァイトラックビは良好な安全性プロファイルを示した。
TRK融合を有する癌は概してまれであり、小児でも成人でも、さまざまな癌腫でそれぞれに異なる頻度で発生する。TRK融合を有する癌は、NTRK遺伝子が別の無関係の遺伝子と融合し、通常と異なるTRKタンパク質が生じることで起こる。
通常と異なるタンパク質、すなわちTRK融合タンパク質は恒常的に活性化フォームを取るか、過剰発現し、増殖シグナル伝達を誘発する。これらのTRK融合タンパク質は、体内の発生部位にかかわらず、癌患者の癌の広がりおよび増殖を促進する発癌性ドライバーとして作用する。
ヴァイトラックビは、選択性の高い経口TRK阻害剤であり、臨床試験において、肺癌、甲状腺癌、悪性黒色腫、消化管間質腫瘍、結腸直腸癌、乳癌、軟部肉腫、唾液腺癌、乳児線維肉腫など、19種類の組織型にわたる固形癌で評価された。同剤は、臨床試験において、癌腫や年齢にかかわらず、中枢神経系原発腫瘍を含むTRK融合を有する成人および小児の固形癌患者で、3年を超えるフォローアップ期間において優れた有効性および忍容性を示している。