武田薬品は16日、ドイツにある同社がデング熱ワクチン候補(TAK-003)の製造用に確保していたIDT社施設の生産能力を、3カ月間、新型コロナワクチン製造用に提供すると発表した。
生産能力提供の対象となるのは、ジョンソン&ジョンソン社グループのヤンセン社が開発した1 回投与の新型コロナワクチンで、IDT社は開発および製造受託機関。
3カ月の同ワクチン製造期間終了後には、規制上の承認を前提に、予定されている重要なデング熱ワクチンの上市に向けて製造を再開する。
この契約により、武田薬品はグローバルにおいて3 つの異なる新型コロナウイルス感染症ワクチンの提供を支援することになる。
同社は、既にノババックス社およびモデルナ社との提携による、新型コロナウイルス感染症ワクチンの日本における迅速かつ安定的な供給への取り組みを公表している。ノババックス社から製造技術の移管を受けることで、2億5000万回分以上の生産能力を整備し、ノババックス社の開発したワクチンの日本での開発および供給を担う。
また、モデルナ社と日本の厚労省との三者間の合意により、武田薬品は5000 万回分のモデルナ社の mRNA 新型コロナウイルス感染症ワクチンを輸入し、日本において供給する。
武田薬品は、新型コロナウイルス感染症およびデング熱の公衆衛生のニーズに応える取り組みを着実に推進している。デング熱ワクチンにより恩恵を受ける可能性のある人々や、デング熱の脅威に晒されている地域の居住者や旅行者に、武田薬品のデング熱ワクチン候補を提供できるように当局などと適切に連携している。
世界人口の半分以上がデング熱のリスクに晒されており、その数は人口増加、グローバル化および都市化により今後数十年間での増加が見込まれている。
Rajeev Venkayya武田薬品Global Vaccine Business Unit Presidentは、「世界中のできるだけ多くの方々へ新型コロナウイルス感染症ワクチンを届けたいヤンセン社の取り組みを、IDT社と共に支援できることを大変嬉しく思う」と明言。さらに「当社は、デング熱ワクチンに対する大きなアンメットニーズがある事も理解しており、TAK-003の供給への影響を最小限にすべくIDT社と緊密に連携していく」とコメントしている。
一方、Jürgen Betzing IDT社CEOは、「社会から切望されている新型コロナワクチンを世界中に届けるサポートができることは大変嬉しく、長年のパートナーである武田薬品の柔軟性に感謝したい」と力説。
その上で、「パンデミックがもたらす課題は、協働とコミットメントによってのみ解決できることが、この数カ月間で明確になってきている。短期間の本合意には、この危機の創造的な解決に貢献する医薬品業界の意志と能力が表れていると考える」と述べている。
IDT社は、ドイツ感染症研究センター(DZIF)との協力による新型コロナワクチンの自社開発に加え、ヤンセン社やアストラゼネカ社の新型コロナワクチンの生産により、新型コロナウイルスとの戦いに大きく貢献していく。