アストラゼネカは13日、フォシーガ(一般名ダパグリフロジン)が米国で慢性腎臓病治療薬として優先審査に指定されたと発表した。対象疾患は、2型糖尿病合併の有無に関わらず新規に発症、または悪化した成人の慢性腎臓病(CKD)。 FDAによる優先審査は、安全性または有効性の改善、重篤な症状の予防、患者コンプライアンスの向上によって、現在使用が可能な治療選択肢よりも著しい進捗をもたらす医薬品に付与される。
処方箋医薬品ユーザーフィー法(PDUFA)に基づくFDAが目標とする審査の判断期日は、2021年第2 四半期中である。
CKDは、腎機能の低下によって定義される病態で、しばしば心疾患や脳卒中の発症リスクの増加と関連している。また、血液透析や腎移植が必要となることもあり、2040年までに世界第5位の死因になると予想されている。現在、米国では3700 万人がCKD に罹患していると推定されている。
バイオ医薬品研究開発部門担当エグゼクティブバイスプレジデントのMene Pangalos氏は、「本指定により、我々は、米国にいる何百万人もの慢性腎臓病患者への新たな治療選択肢の提供に一歩近づいた」と明言。
さらに、「フォシーガは、2型糖尿病、駆出率低下を伴う心不全、そして承認されれば、慢性腎臓病を含む幅広い疾患を対象とする真に大きな変化をもたらす可能性を持つ薬剤である」と強調する。
FDAによる承認審査申請の受理および優先審査の指定は、P3相DAPA-CKD 試験の結果に基づくもの。DAPA-CKD試験において、フォシーガをCKDの標準治療(アンジオテンシン変換酵素[ACE]阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬[ARB])に追加投与したところ、CKD ステージ2から4かつアルブミン尿の増加が確認された患者に対して、腎機能の悪化、心血管死または腎不全による死亡のいずれかの発生による複合評価項目がプラセボと比較して39%低下した(絶対リスク低下[ARR] =5.3%、p<0.0001)。
また、プラセボと比較して全死亡のリスクを有意に31%低下した(ARR = 2.1%、p=0.0035)。
フォシーガの安全性と忍容性は、これまでの試験で確認された安全性プロファイルと一致している。同試験は、2020年3月、独立データモニタリング委員会より、当初の想定を上回る結果が出たため、試験の早期終了が勧告された。試験結果は2020年8月に発表され、The New England Journal of Medicine に掲載された。
2020 年 10 月、フォシーガは、2型糖尿病合併の有無に関わらず、CKD治療薬として、米国でブレークスルーセラピーの指定を受けた。米国においてフォシーガは、成人 2 型糖尿病患者の食事および運動療法の補助療法としての血糖コントロールの改善を適応としている。
また、2020年5月、米国で、2型糖尿病合併の有無に関わらず左室駆出率が低下した成人心不全(NYHA 心機能分類:II~IV)の心血管死および心不全による入院のリスク低下に対する承認を取得した。
なお、現時点で、フォシーガの慢性腎臓病としての効能・効果が承認された国および地域はない。現在日本で承認されているフォシーガの効能・効果は次の通り。
• 2 型糖尿病
• 1 型糖尿病
•慢性心不全 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。