フォシーガ 慢性心不全の効能追加国内承認を取得 アストラゼネカ・小野薬品

 アストラゼネカと小野薬品は30日、選択的 SGLT2 阻害剤「フォシーガ」について、厚労省より27日付けで慢性心不全に対する効能又は効果の追加承認を取得したと発表した。
 心不全は、心臓が十分な血液を体全体へ送り出すことができない命に関わる疾患である。世界で約6400 万人が罹患しており、そのうち少なくとも半数は左室駆出率が低下した心不全であると推定されている。
 同承認は、2型糖尿病合併の有無に関わらず、左室駆出率が低下した心不全を対象としたP3試験( DAPA-HF試験)の良好な結果に基づくもの。同試験の結果は、昨年11月、The New England Journal of Medicine4に掲載された。
 フォシーガは、心血管死または心不全による入院を含む心不全の悪化による複合リスクを統計学的に有意に低下させた初めての SGLT2阻害剤である。DAPA-HF 試験においてフォシーガは、標準治療との併用で、主要複合評価項目をプラセボと比べて 26%低下させた。また、主要複合評価項目の構成項目である心血管死および心不全の悪化の両方において、全体的にリスクを低下した。
 試験期間中、フォシーガ投与群では、患者21例ごとに、1件の心血管死、心不全による入院、または静脈注射による心不全治療につながる緊急受診を回避した。
 同試験におけるフォシーガの安全性プロファイルは、同剤のこれまでの安全性プロファイルと一致していた。フォシーガは、FDA、欧州医薬品庁およびいくつかの国で、左室駆出率が低下した心不全の治療薬として承認されている。
 フォシーガは、心臓、腎臓、膵臓の基本的な関連性をさらに明らかにするという科学としての心腎保護効果というものを発展させている。DAPA-HF試験は、フォシーガの心血管および腎に対する効果を評価する“DapaCare”という臨床プログラムの一部である。このプログラムではまた、P3相DAPA-CKD試験において慢性腎臓病患者の治療を検証している。
 さらに、P3相DELIVER試験において、左室駆出率が保持された心不全患者の治療についても検証中であり、2021年後半に結果が出ると見込んでいる。
 アストラゼネカは、2013 年、フォシーガに関して、小野薬品と日本におけるコ・プロモーション契約を締結している。同契約に基づき、小野薬品は、フォシーガ錠の日本における流通および販売を担い、アストラゼネカと2型糖尿病および1型糖尿病においてコ・プロモーションを実施している。両社は慢性心不全においてもコ・プロモーションを実施する。
 DAPA-HF試験の治験担当医師であり、阪和第二泉北病院院長/大阪大学医学研究科招へい教授の北風政史氏は、「心不全とは、すべての心臓病の共通した臨床像であり、我が国では約130万人が罹患している」と紹介。さらに、「心不全に罹患する多くの患者は左室駆出率など心機能がかなり低下しており、その5 年生存率は約50%とがんより不良な悪性疾患といえる」と説明する。
 その上で、「心不全は、いろいろな薬物治療を行うが、心不全治療に反応しないときは、心臓移植をする以外に根本治療はない。今回、フォシーガがの心不全での適応取得は、我々循環器医が心不全に対する大きな武器を手に入れたことになる」とコメントしている。

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