認知機能改善薬候補化合物がP2試験で好結果 塩野義製薬

 塩野義製薬は2日、認知機能改善薬候補BPN14770について、グループ会社のTetra社が実施した脆弱X症候群(Fragile X Syndrome: FXS)患者を対象としたP2相試験で良好な結果を得またと発表した。
 BPN14770は、記憶形成に関わるPhosphodiesterase 4D(PDE4D)を標的とした新規の選択的ネガティブアロステリックモジュレーターである。このユニークな作用機序は、FXS、アルツハイマー型認知症(AD)およびその他の認知症、学習/発達障害、統合失調症などの治療が困難な中枢神経疾患における認知および記憶機能を改善する可能性がある。
 BPN14770は、既に実施されたADを対象としたP2相試験において認知機能の改善傾向が確認されている。
 また、非臨床試験において、FXS患者で損なわれていることが報告されている神経細胞同士の結合に対して、BPN14770投与による成熟促進が見られている。
 P2相試験は、FXS患者を対象に、無作為化二重盲検プラセボ対照2群2期クロスオーバー試験として実施したもの。期間1と期間2の間にウォッシュアウト期間はなく、それぞれの投与期間は12週間で、18〜41歳の成人FXS患者30人が登録され、BPN14770またはプラセボが1日2回投与された。
 キャリーオーバー効果を認めたため、有効性に関する主要な統計解析は期間1に限定されているが、全ての被験者が2期の治療期間を完了した。
 主要評価項目である安全性および忍容性に関して、全例(30例)は試験を中止することなく完遂し、良好な安全性と忍容性を示した。有害事象の発現率は、BPN14770投与時とプラセボ投与時でそれぞれ36.7%(11/30例)と26.7%(8/30例)であった。最も多かった有害事象である嘔吐については、BPN14770投与時とプラセボ投与時の発現頻度はそれぞれ10.0%(3例)と6.7%(2例)であった。
 有効性に関しては探索的な評価を行ったところ、NIH-Toolboxを使用した認知機能の評価では、音読認識(調整平均の差 + 2.80、p = 0.0157)、画像語彙(+ 5.79、p = 0.0342)、および認知複合スコア(+ 5.29、p = 0.0018)の項目でプラセボ群に対して統計的に有意な差が見られた。
 100ポイントの視覚的評価スケールを使用した親あるいは介護者の評価においては、言語(調整平均の差 + 14.04、p = 0.0051)および日常機能(+ 14.53、p = 0.0017)の項目でプラセボ群に対して統計的に有意な差がみられた。BPN14770からプラセボにクロスオーバー後も12週間後まで効果が持続した。
 塩野義製薬では、引き続き、アンメットメディカルニーズの高い認知機能障害に対する画期的な治療薬を世界中の患者に届けられるように尽力し、FXS、ADを含む精神・神経系疾患を抱える患者とその家族のQOLや生産性の向上に貢献していく。
 なお、同件が2021年3月期連結業績に与える影響は軽微である。

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