新型コロナ予防ワクチン開発が順調に進捗 塩野義製薬手代木社長

手代木氏

 塩野義製薬の手代木功社長は30日、2020年度中間決算説明会で会見し、新型コロナウイルス感染症に関する取り組みに言及。予防ワクチンについては、「年内にP1、年明けにP2を国内で行い、2月または3月からの大規模P3試験はグローバルに実施する」スケジュールを示し、「順調な進捗状況」をアピールした。
 一方、治療薬は、「有効性と安全性のさらなる検証が必要と判断し、2020年度内の臨床試験開始目標を断念した」と報告。「新型コロナ治療薬の新薬としては、ゾフルーザやタミフルのインフルエンザ薬のような有効性があり、プラセボと同程度の安全性を示す薬剤の創製を目指したい」との決意を示した。
 検査・診断キットの提供では、「SATIC法による迅速診断キットの初期型製品の提供開始目標を本年12月に改め、供給体制の構築に注力する」と述べた。
 また、2020年上期業績については、「売上未達は残念であるが、研究開発費を増やしながら利益目標を達成できたので堅調な結果と受け止めている」と評価。利益面では、「ビーブ社の配当が大きく寄与した」ことも紹介した。
 ゾフルーザについては、「現場のドクターから好意的な情報のフィードバックを受けている」と明かした上で、「インフルエンザマーケッシェアの30~40%を確保したい」と意気込んだ。
 塩野義製薬が開発中の新型コロナ予防ワクチンは、実用化実績のある確立された技術をもとにした遺伝子組換えタンパクワクチンで、国立感染症研究所、九州大学の協力により、抗原蛋白とアジュバントの選定を完了。選択した抗原蛋白を含むワクチンを接種したモデル動物への感染実験において、明確な重症化(致死)要望が確認されている。
 2または3月からの開始を予定するP3大規模試験(2万~3万例)については、グローバルな実施を視野に引き続き当局と協議している。
 ワクチンの生産は、UNIGEN社(原薬製造)、アピ社(製剤製造)と連携して、来年3月までに第一期の供給体制を構築。2021年末までに増産体制(3000万人分~供給)構築を完了する。
 新型コロナ治療薬については、「現在の同定化合物は、安全性と有効性のバランスが世界で臨床試験が実施されているリポジショニング薬と同程度である」と報告。その上で、2020年度内の臨床試験開始目標断念理由を「全くの新薬としては、今使われている薬剤と安全性・有効性が同程度では意義がない」と説明し、「既存のリポジショニング薬を有効性・安全性ともに上回る新薬を様々な創薬モダリティを駆使して実現したい」と力説した。
 検査・診断キットは、SATIC法による迅速診断の実用化に向けて国内3大学(日本大学、群馬大学、東京医科大学)と提携。「12月に初期型製品の提供を目指す」とともに、「より簡便かつ多検体の迅速診断を可能とする改良型キットの早期提供に向けた製品開発ならびにスケールアップ検討」を並行して実施している。

澤田氏


 こうした中、医療現場からの「寒い季節は、新型コロナとインフルエンザの症状が似ているため診断が付きにくい」との声に対し、澤田拓子副社長兼ヘルスケア戦略本部長は、「SATICを早く提供できるように尽力して、判別に役立つようにしたい」と訴えかけた。
 澤田氏は、ゾフルーザのインフルエンザ感染予防にも言及し、「国内では、11月の適応承認を予定している。高齢者や小児、基礎疾患を持つハイリスク患者に対する予防薬として非常に有用性が高い。経口投与で1錠飲むだけで予防できる」とそのメリットを説明した。
 今後の成長に向けた取り組みでは、手代木氏が、国内事業では、「ADHDファミリーのインチュニブ、ビバンセの最大化」、と「インフルエンザファミリー(ゾフルーザ、ラピアクタなど)による早期診断・早期治療への貢献」を指摘。
 海外事業(欧米)では、「AMR(薬剤耐性)対策としてのセフィデコルの拡大」を挙げ、「この上期に40億円と非常に好調な滑り出しをみせている。適正使用を前提に、本剤を必要とする患者さんに確実に届けられるように引き続き取り組みを継続したい」と強調した。
 また、2020年度通期業績予想では、「営業利益は、渋谷ビル再開発に伴う区分所有持分の交換益(229億円)が加わって1332億円に上方修正したが、それを除いた当初予想(5/11)の1103億円は必ず達成したい」と語気を強めた。
   

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