メスを使わない低侵襲医療技術の開発をリードするインサイテック(本社:イスラエル)子会社のインサイテックジャパンは23日、手足の震えに悩む男女500人を対象に「ふるえ」の症状に対する意識調査結果を発表した。同調査により、手足のふるえに悩む患者の約4割が、医療施設で診察や検査をしても診断名がつかず、ふるえの症状に対して治療を受けていないなどの実態が判明した。
今回の調査は、高齢化で患者増加が予想される「ふるえ」の症状に対して、治療や診断の実態、患者がどのような問題を日常生活で抱えているのかなどを明らかにすることを目的としたもの。手足の『ふるえ』に悩み医療機関に相談・受診したことのある全年齢(10代~65歳以上)の男女500人を対象にオンライン(実施機関:楽天インサイト)で実施された。調査期間は、本年2月26~27日の2日間で、有効回答は500名。調査監修医は、望月秀樹氏(大阪大学大学院医学系研究科神経内科学教授)が務めた。
主な調査結果と望月氏のコメントは次の通り。
◆調査結果
- 手足のふるえに悩む患者の約4割が、医療施設で診察や検査をしても診断名がつかず、ふるえの症状に対して治療を受けていない。
- ふるえの症状で病院を初めて受診された患者の約3割が内科、約2割が神経内科、そのほか脳神経外科や精神科など、初診での診療科の選択が多岐にわたっていた。
- 手足のふるえに悩む患者は、「文字がうまく書けない」「お箸やコップがうまく持てない」という日常生活に支障をきたしているだけでなく、「人前に出るのが恥ずかしい」という心理的な悩みも抱えている。
◆望月氏のコメント
ふるえの相談は脳神経内科で
ふるえの治療は、薬物治療から外科治療まで、患者に合わせて様々な選択肢があり、治療によって日常生活での困難を軽減できる可能性が高い。ふるえの症状に悩んでいる人は、専門的な診断と治療を行うことのできる脳神経内科で相談できる。
本態性振戦やパーキンソン病などによる日常的な手足のふるえに悩む患者は、国内に数百万人いるといわれており、今後も高齢化が進む中で増加していくと思われる。だが、ふるえは、適切な治療によって改善される可能性が高い症状である。
ふるえは、一過性の精神的な緊張や疲労などによることもあり、内科や精神科を受診する患者も少なくない。その一方で、専門的な診断と治療ができる医療施設は限られており、ふるえに悩んでいる人は脳神経内科を受診を推奨したい。地域の脳神経内科については日本神経学会の公式ウェブサイト(https://clk.nxlk.jp/oEhiJnBI)で調べられる。
ふるえで特に多いのは、本態性振戦とパーキンソン病である。前者は、原因がはっきりしておらず、パーキンソン病の20倍以上の患者が存在する。後者は、特定の神経細胞の変性脱落を原因としている。震えで悩んでいる人は、人口の2.5~10%で、40歳以上では4%、65歳以上では5~14%に上る。
本態性振戦の薬物治療では、第一選択薬がβ遮断薬(アロチロール、プロプラノロール)第二選択薬が抗不安薬、抗てんかん薬(ガバペンチン、トピラマート)である。喘息や心疾患、糖尿病などを有するβ遮断薬が使えない患者は、第二選択薬を使用する。
治療薬を投与しても振戦が改善しない場合は、外科治療が行われている。近年、脳に穴の開けない手術として、収束超音波治療(FUS)視床破壊術が注目されている。FUS視床破壊術は、本態性振戦において世界で4000例以上の実績があり、わが国でも2019年に保険適用された。パーキンソン病のふるえ症状についても本年9月から保険適用が開始されている。
これまで、多数の人がふるえに困っているのに対して、有用性の高い治療薬がなかったため、「ふるえが疾患である」という啓発はされてこなかった。最近では、FUS視床破壊術が好成績を示していることから、「ふるえは疾患であり、FUSによる治療法の有用性が高い」ことを訴求していきたい。