塩野義製薬は13日、東京都内で中国平安保険との合弁会社「平安塩野義」(JV)の事業に関する説明会を開催し、JVの販売ビジョンとして、2022年度405億円、2024年度700億円+戦略的事業投資による上積みを目指すことを明らかにした。
平安塩野義は、中国平安の「中国最大の生保/金融サービス」、「確立したヘルスケアエコシステム」、「圧倒的なブランドパワー」と、塩野義製薬の「高い自社創薬力」、「高率的な医薬品開発(自社創薬比率69%)」、「長年培ってきた感染症/CNSに対する洞察力」の異なる強みを融合し、ヘルスケアニーズに応えるトータルヘルスケアプラットフォームの確立を目指して設立された。出資比率は、塩野義製薬51%、中国平安49%。
特に、中国平安保険のヘルスケアプラットフォームの一つの「ムコドクター」は、中国の医療施設をオンラインで結んで、「適切な患者を適切な医師に紹介する効率的なシステム」として注目される。塩野義製薬では、「まず第一歩として、同システムを活用した同社製品・医療サービスの提供を行い」、さらには、「新しい薬剤や診断薬、デバイスの開発を中国平安保険とともに実施していく。
手代木功塩野義製薬社長は、「創薬力を磨きながら、他の産業に対する理解を高めることが、我々の強みになり、パテントクリフの緩和にも繋がる。平安グループとの協業で、ソリューション創出・提供型のヘルスケアプラットフォーマーとして塩野義のベースとなるビジネスを作り上げたい」と断言。その上で、「塩野義にない強みを有し、シナジー効果が期待できる平安グループがベストパートナーである」と強調した。
一方、ジェシカ タン平安グループCO-CEOは、「我々は、中国最大の公的/プライベート保険ネットワークや、AIテクノロジー、関連ビッグデータを有しているが、製薬業界とのパートナーシップが欠けていた」と指摘し、「69%もの自社創薬比率を誇る塩野義の力でそこを埋めて頂きたい」と要望した。
中国平安は、中国市場での保険のインターネットサービス利用者5.6億人、保険/金融サービス加入者2.1億人を誇る。オンライン診療プラットフォームの提携薬局は11万軒で、中国の薬局50万軒の1/5をカバーしている。自前医療従事者は1800名(中NO1)。平安塩野義では、これら平安グループの販売チャンネルへの継続的な製品投入により、早期からの売上収益への貢献を目指す。
その具体的なシナリオは、まず、2020年度からオンライン診療などとコラボレーションを開始し、今ある既存のジェネリック4品目やOTC1品目を供給。さらに、20品目以上の供給を目指し、2022年度にOTCで170億円(日本国内のOTC売上高含む)、オンライン事業・新薬開発事業で230億円を見込んでいる。平安塩野義のOTC事業に日本国内のOTC売上高が含まれるのは、日本国内のシオノギヘルスケアが平安塩野義傘下の子会社となったため。2019年度のシオノギヘルスケアの売上高は約120億円。
その後は、2022年度の中国でのセフィデロコール(多剤耐性グラム陰性菌治療薬)の承認取得を視野に、2024年度にはOTCで200億円、オンライン事業・新薬開発事業で500億円+戦略的事業投資による上積みを目指す。
手代木氏は、中国で展開していく新薬として、セフィデロコールに加えて「オピオイド誘発性便秘症治療薬やワクチン」などを紹介。ワクチンは、「組み換えタンパクワクチンとして、まずは新型コロナワクチン、続いてインフルエンザワクチンの投入や、経鼻投与の有用性」について言及した。
また、2024年には、JV発開発品の臨床入り1品目を予定しているが、塩野義製薬では、平安塩野義と塩野義本体の2つの創薬エンジンによる継続的な新薬の創出を目指している。吉田達守董事長兼CEOは、「日本と中国の独立した2つの強い研究拠点で化合物を創出していく」考えを示し、「平安塩野義の研究開発には、塩野義からエース級の人材を投入していく」と強調した。
最後に、手代木氏は、平安塩野義の収益性について、「このJVを如何に最大化するかに重点を置いている。その点を塩野義も中国平安も話し合いで合意している」と明言。さらに、「平安塩野義に新薬を日本から導入、あるいは研究開発するに当たっては、中国での特許料を塩野義本体で得ることは考えていない。平安塩野義で創出された新薬は、日米欧で拡大することで塩野義の利益を確保する」方針を示した。
その具体的な可能性としてCNS分野の創薬を挙げ、「中国の個人情報は、日米欧に比べて自由度が高いところに開発において大きなメリットがある」と述べた。