アストラゼネカは28日、同社とMSDのリムパーザについて、進行卵巣がんを対象としたP3試験(SOLO-1試験)で、無増悪生存期間の中央値をプラセボの1年に対して4年半超に延長したと発表した。
対象疾患は、新たに診断されたBRCA遺伝子変異陽性(BRCAm)卵巣がん。SOLO-1試験では、白金製剤ベースの化学療法による初回治療後に完全奏効または部分奏効を示した後の維持治療として、プラセボとの比較において無増悪生存期間の長期的な延長を示した。
卵巣がんは、全世界で女性のがんによる8番目の死因であり、2018年には全世界で約30万人が新たに診断され、約18万5000人が死亡した。卵巣がん患者の約22%がBRCA1またはBRCA2遺伝子変異を有している。
SOLO-1試験の5年間の経過観察(追跡調査)データにより、リムパーザが病勢進行または死亡のリスクを67%低減し(ハザード比 0.33;[95% 信頼区間 0.25-0.43])、無増悪生存期間中央値をプラセボの13.8カ月に対し、56.0カ月に延長したことが示された。
5年の時点で病勢進行が認められなかった患者の割合は、プラセボ投与群の20.5%に対し、リムパーザ投与群では48.3%であった。
また、投与期間中央値はプラセボ投与群が13.9カ月であったのに対し、リムパーザ投与群は24.6カ月であった。
SOLO-1試験の治験医師の一人で、The Royal Marsden NHS Foundation Trust顧問腫瘍内科医師、The Institute of Cancer Research准教授のSusana Banerjee氏は、「対象患者において、リムパーザによる2年間の維持療法により得られた臨床上の有用性は治療終了後も長期にわたって継続した」と報告。さらに、「5年経過した時点でも、これら患者の半数近くはがんが進行せずに病勢が安定していた。今回得られた結果は、BRCA遺伝子変異陽性の進行卵巣がんの治療において意義のある進歩を示している」と強調している。
一方、アストラゼネカのオンコロジー領域研究開発担当エグゼクティブバイスプレジデントのJos Baselga氏は、「SOLO-1試験結果から、リムパーザによる維持療法によって、たとえ進行がんであっても患者の寛解状態を持続できることが示された」と説明。さらに、今回発表された結果は、「」病勢進行を遅延させる目的で治療を行う際には、診断時に患者のバイオマーカーの状態を特定することが極めて重要であることをさらに裏付けた」コメントとしている。
リムパーザの安全性プロファイルについては、これまで確認された結果と一致していた。発現率20%以上の主な有害事象は悪心(77%)、疲労・無力症(63%)、嘔吐(40%)、貧血(39%)および下痢(34%)。
また、主なグレード3以上の有害事象は貧血(22%)および好中球減少(9%)で、リムパーザ投与群患者の12%は有害事象によって治療を中止した。P3相SOLO-1試験の結果は、18日に欧州臨床腫瘍学会のバーチャル会議で発表された。
なお、同試験は、その主要評価項目である無増悪生存期間を2018年6月に達成し、この結果に基づき、米国、EU、日本、中国およびその他数カ国において承認を取得している。