新型コロナワクチン2020年内の臨床試験入り目指す  塩野義製薬

 塩野義製薬は24日、新型コロナウイルス感染症に関する取り組みの進捗状況として、予防ワクチン開発の進展等を報告した。
 同社は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の世界的な蔓延による社会の混乱が続く中、医薬品の安定供給に努めるとともに、感染症を重点疾患領域に掲げる製薬企業として、公的機関やアカデミア、パートナー企業と連携し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬やワクチン、診断薬の開発に鋭意取り組んでいる。
新型コロナウイルス感染症に関する各取り組みの進捗状況は、次の通り。
 1.ワクチン開発に向けた取り組み
 グループ会社のUMNファーマが有する昆虫細胞などを用いたタンパク発現技術「BEVS」を活用した遺伝子組換えタンパクワクチンを開発している。遺伝子組換えタンパクワクチンは、ウイルスの遺伝子情報から目的とする抗原タンパクを発現・精製後に投与に供される。
 遺伝子情報そのものを投与し、体内で抗原タンパクを合成させるmRNAワクチン等の新規技術と比べて、抗原発現や精製に一定の開発期間を要する一方で、BEVSを活用したインフルエンザ予防ワクチンをはじめ、複数の製品がその効果と安全性を基に承認・実用化されている確立された技術だ。
 塩野義製薬は、これまでに共同研究先である九州大学・橋口研究室 (現在は京都大学に移籍)において調製された複数種の抗原タンパク候補ならびに、同社がBEVSにより調製した抗原タンパク候補について、ワクチンに添加する複数のアジュバント候補とともにマウスを用いた免疫原性試験を順次実施してきた。
 共同研究先の国立感染症研究所で実施された免疫原性に関する一連の評価により、今回抗原特異的なIgG抗体価の上昇とウイルス中和活性を誘導する抗原タンパクおよびアジュバントの組み合わせを選定するに至った。
 現在、臨床試験開始に必要な安全性試験や予防効果を裏付ける薬理試験に着手している。同社は、2020年内の臨床試験開始に向けて、これら非臨床試験を迅速に実施するとともに、ヒトでの安全性と効果の確認に求められる臨床試験内容について、引き続き厚生労働省や独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)との協議を進めていく。
 また、2021年末までに3000万人分以上のワクチン生産を目標に、これらの開発計画と並行して、ワクチンの製法ならびにスケールアップ検討と、生産設備の構築・増強を加速する。
 2. 治療薬の創製に向けた取り組み
 北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターとの共同研究において見出された新型コロナウイルス株に対する有望化合物の構造情報を起点に、新たに合成された後続化合物群に対して、薬効、安全性等の探索的評価を順次実施中。現時点で最も有望な化合物に対する製造検討は実施済みで、最終候補品を選抜後、速やかに非臨床試験に着手できるよう準備を進めている。
 塩野義製薬では、引き続き2020年度内の臨床試験開始を目標に、本創薬研究に注力する。
 3. 診断薬の開発に向けた取り組み
 2020年6月22日に既報通り、日本大学、群馬大学、および東京医科大学とのSARS-CoV-2を含むウイルスの新規迅速診断法に関するライセンス契約7に基づき、同共同研究チームが開発した革新的核酸増幅法(SATIC法:Signal Amplification by Ternary Initiation Complexes)を用いたSARS-CoV-2感染に対する迅速診断の実用化に取り組んでいる。
 SATIC法は、検出機器を必要とせず、目視かつ25分程度という短時間で感染の有無を判定できる手法で、PCR法と同等の高い感度により、採取容易な唾液や喀痰サンプルからの検出を可能とする優れた特性を有する。
 現在、同技術の製品化検討と体外診断用医薬品としての承認申請準備を進めているが、抗原キット等の種々の検査法が発売される中で、同技術の特性を活かして医療現場等におけるニーズ応えるには、一定水準以上の供給量の確保が必要である。そのため、初期型製品の提供開始目標を当初の2020年9月から2020年12月に改め、供給体制の構築に注力する。
 また、初期型に関しては複数試薬の用時混合調製が必要であるため、一般の医療機関等においても広く活用できるように、より簡便かつ多検体の迅速診断を可能とする改良型(キット)の早期提供に向けた製品開発ならびにスケールアップ検討を並行して進めていく。
 なお、同社は、既感染者数の把握を目的としたSARS-CoV-2/COVID-19の疫学調査や研究などに役立ててもらうために、新型コロナウイルスIgG/IgM抗体検出キットを研究用試薬として販売している。より利便性を高めるため、当初発売していた50テスト/キットの製品から20テスト/キットの製品に変更している。

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