住友理工とライラックファーマは24日、新しい「マイクロ流路装置(脂質ナノ粒子製造ツール)」を共同開発したと発表した。同製品は、脂質ナノ粒子を形成するマイクロ流路チップ(1)と、マイクロ流路チップに原料液を供給する送液装置(2)がセットになっている。
流路チップについては、粒径がそろった高品質の粒子を再現性高く製造できるライラックファーマ独自のマイクロ流路「iLiNP(アイリンプ)」と同形状の流路を採用している。高品質の脂質ナノ粒子を簡単に試作できる研究用機器として、28、29日に開催される「第36回日本DDS学会学術集会」に出展する(企業展示はオンライン)。
ライラックファーマは、医薬品を開発するための北海道大学発ベンチャーとして2016年に設立。iLiNPは、北海道大学大学院工学研究院の渡慶次学教授、真栄城正寿助教らが開発し、ライラックファーマが技術導入した独自の流路形状を持つマイクロ流路だ。
脂質ナノ粒子は、原料となる脂質溶液を水で希釈し、脂質を水中で自己集合させて作られるが、iLiNPでは流れてくる脂質溶液と水をマイクロ流路内の微小空間で一体化させ、最適な希釈状態を常に作り出せるように流路形状を工夫している。その結果、タンク内で撹拌しながら希釈する従来製法よりも粒径がそろった高品質の脂質ナノ粒子を再現性高く作り出せるのがが特長である。
また、総流量や各溶液の流量比率を変えれば希釈状態を変えることができ、その結果として製造する粒子の大きさも容易に変えれられる。
一方の住友理工は、1970年代より、自動車内部のワイヤーハーネスの先端に装着し、防水の役割を担う「シール材」として、シリコーンゴムを原料とする「コネクタシール」などを開発・販売してきた。この精密ゴム成型技術を生かして、マイクロ流路チップの製造・販売を開始し、2019年より、ライラックファーマとの共同開発がスタートした。
今回の開発品であるマイクロ流路チップは、住友理工の高分子材料技術(材料配合・微細加工)を生かし、高透明シリコーンによる製品化を実現。従来のガラス製や樹脂製のチップと比較すると、依頼に応じた形状の製品を、コストを抑えてスピーディに供給することが可能となった。
また、新たに開発したマイクロ流路チップを多くの研究者に簡便に使用できるように、同マイクロ流路チップに合わせて送液装置を開発。ポート一体型のカートリッジにしたチップを装置にセットするだけで、簡単に、人為的なミスを発生させることなく、さまざまな配合の脂質ナノ粒子を短時間で試作できるようになる。