ゾフルーザ 家庭内インフル感染予防国内P3試験好結果がNew England Journalに掲載 塩野義製薬 

 塩野義製薬は9日、抗インフルエンザウイルス薬ゾフルーザの、家族内インフルエンザ感染予防効果検証を目的とした国内予防投与P3試験(BLOCKSTONE)の良好な結果が、「The New England Journal of Medicine」7月8日号に掲載されたと発表した。
 BLOCKSTONEは、インフルエンザウイルス感染症患者のいる家族または共同生活者(被験者)に被検薬を投与したときの投与後10日の間にインフルエンザウイルスに感染し、発熱かつ呼吸器症状を発現した被験者の割合を主要評価項目としたもの。ゾフルーザ投与群は、プラセボ投与群と比較して、有意にインフルエンザウイルス感染症の発症割合を低下させた。ゾフルーザの予防効果は、重症化およびインフルエンザ関連合併症を併発するリスクの高い被験者(糖尿病、喘息または慢性肺疾患、心疾患などの基礎疾患を有する患者、5歳以下の小児、65歳以上の高齢者など)、12歳未満の小児被験者、被験者のワクチン接種の有無に関わらず確認された。
 安全性に関しては、同薬は良好な忍容性を示し、安全性上の新たな懸念はなかった。
 同論文筆頭著者の池松秀之氏(リチェルカクリニカ代表、臨床内科医会インフルエンザサーベイランス試験責任者)は、「BLOCKSTONEは、インフルエンザ感染拡大の中心となる家族内感染において強力にインフルエンザ感染を抑制することを明確に示した。ゾフルーザの強いウイルス増殖抑制効果が、感染および自覚症状がない感染者での発症抑制に反映されていると考えられる」と考察。さらに、「予防が必要とされるハイリスク因子の保有者や、医療従事者など感染による大きな影響が懸念される人々にとって、ゾフルーザは1つの選択肢として大きな福音となると思われる」と述べている。
 ゾフルーザは、12歳以上の健常のインフルエンザウイルス感染症患者を対象としたグローバルP3床試験(CAPSTONE-1)、インフルエンザ関連合併症を発症するリスクが高い患者を対象としたグローバルP3試験(CAPSTONE-2)において良好な結果を示しており、患者のリスク要因の有無によらず、インフルエンザウイルス感染症の治療に貢献している。BLOCKSTONEの結果は、ゾフルーザがインフルエンザウイルス感染症の治療だけでなく、予防においても効果を発揮することを示すものである。なお、同件が2021年3月期連結業績に与える影響は軽微である。
 BLOCKSTONE試験は、インフルエンザ初発患者の被験者を対象に実施した、多施設共同、無作為化、プラセボ対照二重盲検比較の試験。同試験の主要評価項目は投与後10日間における、インフルエンザウイルスに感染し、発熱かつ呼吸器症状を有する被験者の割合である。インフルエンザを発症した患者の割合は、ゾフルーザ投与患者で1.9% (7/374)、プラセボ投与患者では13.6% (51/375)であり、ゾフルーザは同一世帯内感染を有意に減少させることが示された(プラセボに対して86%減少、p<0.0001)。
 また、サブグループ解析により、次の結果が得られた。
・重症化およびインフルエンザ合併症を起こしやすいリスク要因をもつ被験者において、ゾフルーザはプラセボに対し発症抑制効果を示した(2.2%[1/46例] vs 15.4%[8/52例])。
・12歳未満の小児において、ゾフルーザはプラセボに対し発症抑制効果を示した(4.2% [3/71例] vs 15.5%[21/124例])。
・インフルエンザウイルスの亜型別に解析した結果、A/H1N1pdm型及びA/H3型の両方において、ゾフルーザはプラセボに対し発症抑制効果を示した(A/HIN1pdm型:1.1%[2/176例] vs 10.6%[19/180例]、A/H3型:2.8%[5/181例]vs 17.5%[32/183例])。
・ワクチン接種の有無に関わらず、ゾフルーザはプラセボに対し発症抑制効果を示した(ワクチン接種有り:2.3%[3/131例]vs 16.9%[21/124例]、ワクチン接種無し:1.6%[4/243例]vs 12.0%[30/251例])。
 主な副次評価項目については次の通り。
・インフルエンザウイルスに感染し、発熱または呼吸器症状を発現した被験者の割合は、ゾフルーザ投与群で5.3%(20/374例)、プラセボ投与群で22.4%(84/375例)であり、ゾフルーザの投与により、インフルエンザウイルス感染症の発症割合はプラセボ群に対し76%減少した。
・有害事象の発現率は、ゾフルーザ投与群とプラセボ投与群でそれぞれ22.2%と20.5%であった。また、ゾフルーザ投与群において重篤な有害事象の発現は認められなかった。
・同薬に対し感受性が低下したアミノ酸変異株に関する情報:ゾフルーザ投与群では、同薬投与後にPA/I38アミノ酸変異株が10/374例(2.7%)、PA/E23アミノ酸変異株が5/374例(1.3%)検出された。
 また、PA/I38アミノ酸変異株が検出された10例のうち医師の判断で4例にノイラミニダーゼ阻害薬(NAI)が投与され、PA/E23アミノ酸変異株が検出された5例のうち医師の判断で2例にNAI、1例にゾフルーザが投与されている。発熱などの症状が確認された全ての被験者は、抗インフルエンザウイルス薬投与の有無に関わらず問題なく回復した。
 一方、ゾフルーザの開発および販売については、現在ロシュグループとの提携下で進められており、日本と台湾における販売は塩野義製薬が、それ以外の国ではロシュグループが行う。ゾフルーザは、日本、米国含む複数の国々でインフルエンザウイルス感染症の治療薬として承認されており、インフルエンザウイルス感染症の治療に貢献している。
 現在、日本、台湾では、インフルエンザウイルス感染症の予防に関して適応追加の申請中。米国では、経口懸濁用顆粒剤の製造販売承認申請と「1歳以上12歳未満の合併症のない急性のインフルエンザウイルス感染症治療」および「1歳以上のインフルエンザウイルス感染曝露後予防」を適応とした新薬承認追加申請を実施し、FDAから受理されており、FDAの審査終了目標日(PDUFA date)は本年11月23日である。

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