参天製薬は7日、東京都内で、2030年とその先のSantenのありたい姿を見据えた新長期ビジョン「Santen 2030」の説明会を開催した。説明会で会見した谷内樹生代表取締役社長兼CEOは、「目の分野に特化したソーシャルイノベーターとして人々、そして社会に貢献し、持続的かつ長期的な成長を2030年に向けて実現していきたい」と抱負を述べた。
世界の人口のうち近視26億人、老視18億人、加齢黄斑変性1億9600万人、糖尿病網膜症1億4600万人、緑内障7600万人など、多くの人が目に関する不具合や疾患を抱えている。また、そのうち少なくとも22億人は視覚障害に至っており、その10億人以上は治療されていない、または未然に防げたとされている。このように、「見えること」の阻害は、世界の多くの人々が抱える社会課題となっている。
さらに、今後、2030年から2040年までには、アジアを中心とした人口の増加・高齢化が急速に進み、加齢に伴う目の疾患や不具合の増加が予測される。加えて、世界各国の経済発展に伴う生活習慣病による目の疾患や、COVID-19による社会におけるITツールの浸透の加速も影響し、デジタルデバイス使用による目のストレス、近視など目に不具合を抱える人々のさらなる増加が懸念されている。世界の視覚障害に関する経済的コストは、3.5兆米ドル、日本円にすると380兆円にも上る。
一方、ライフサイエンス業界においても、この 10~20年で大きな変化が見込まれている。より個人にカスタマイズされたサービスや、人々の健康・ウェルネスへの関心の高まり、AI・IoT・自動化等の技術革新、さらには細胞・遺伝子・電子デバイス等、目の課題に対する新たなソリューションが期待されている。
こうした環境変化に鑑み、参天製薬は創業130周年を迎える本年に、「世界における目の社会課題にいかに対峙すべきか」、「目を専門とする同社の果たすべき役割は何か」、「どのように社会に貢献できるのか」という課題認識のもと、2030年とその先の世界を見据えた新長期ビジョン「Santen 2030」を策定した。
「Santen 2030」は、世界中の一人ひとりがBest Vision Experience を通じて、それぞれの最も幸福な人生を実現する世界を創り出す「WORLD VISION」 達成を目指し、2030年とその先に向けてSantenのありたい姿を示した「Santen’s VISION」、そしてそのための「STRATEGY」、および「GOAL」で構成されている。
「Santen’s VISION」は、2030年とその先に向けてのSanten のありたい姿として「Become A Social Innovator」を掲げている。参天製薬は、眼科領域での強みに加え、世界中の技術や組織・人材をつなぎ、社会に価値あるイノベーションをもたらすことで、「見る」を通じた人々の幸せを実現するSocial Innovatorを目指す。
また、「Santen’s VISION」実現のための「STRATEGY」は、Ophthalmology(眼科医療への貢献)、Wellness(健康な目の追求)、Inclusion(視覚障がいの有無を超えて共生できる社会の実現)の3つの戦略で構成されている。
具体的な施策としては、Ophthalmologyでは、「デジタルや電子デバイスを活用した眼科医療の進化」、「細胞治療・遺伝子治療を含む治療のイノベーションへの取り組み」などを実施する。
Wellnessでは、デジタル技術を活用した、疾患の早期発見、目の健康維持・向上を促す製品やサービス、目の健康に対するリスクの予測・可視化等を図りながら、人々のライフステージに応じて「早期発見」と「より良い目の状態の追求」を推進していく。
Inclusionでは、Social Innovatorとして、視覚障がいに対する人々の認知・理解の向上、ともに楽しみ・価値観を共有できる取り組みの推進、視覚障害者の QOL向上に向けて、デジタル技術を中心とした新たなソリューション探索等を推進。参天は、これら3つの戦略を駆使することで、眼の疾患や不具合に起因する世界中の人々の社会的・経済的な機会損失を削減するGOALを目指す。
谷内社長は、「目を取り巻く環境の変化、目の不具合を抱える人の増加に対応するため、より速いスピードで目にまつわる課題解決に取り組む必要がある」と強調。その上で、「新しいイノベーションを世に送り出し、社会課題を解決することを通じて成長を実現する道筋を描く時が来た。世界でも珍しい目を専門としてグローバル活動している参天は、目の悩みを抱える世界の人々に対して誰よりも貢献できると自負している」と訴求した。