新型コロナ重症肺炎治療の再生医療企業治験を計画     ロート製薬

 ロート製薬は、6月末に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症肺炎を対象とした他家間葉系幹細胞を用いた再生医療の企業治験の治験届けを当局に提出する(予定)と発表した。治験実施予定期間は、2020年8月~2021年12月まで。
 同治験に用いる「ADR‐ 001」(他家間葉系幹細胞を構成細胞とする細胞製剤)は、ロート製薬が原材料の調達から生産までを国内で行う製剤。他家間葉系幹細胞を用いたCOVID-19 重症肺炎に対する治験に国産の製剤を用いるのは初めて。
 COVID-19に関するこれまでの報告では、およそ2割が重症化し、この重症化には感染者の免疫細胞がウイルスと戦うために作るサイトカインが制御不能となって放出され続ける「サイトカインストーム」と呼ばれる現象が関わっていると言われている。
 また、サイトカインストームが発生した場合、新型コロナウィルスそのものの排除のみならず、サイトカインストーム状態に対する治療が必要と考えられている。この治療法の一つとして、間葉系幹細胞を用いた治療が世界中で試されており、効果があると推測できる報告が複数されている。
 ロート製薬が開発を進めている「ADR-001」は、他家脂肪組織由来幹細胞を構成細胞とする細胞製剤である。動物由来のウイルス感染のリスクを考え動物由来原料を含有せず、脂肪由来幹細胞の能力を最大限に引き出す独自の無血清培地で脂肪組織に含まれる幹細胞を培養している。脂肪組織は組織中に多くの間葉系幹細胞を含み、採取時の侵襲性が比較的低く、手術時など余剰組織となるケースもあることから、比較的入手が容易であり、他家脂肪細胞による同種移植のため、必要な患者に迅速に提供できるメリットがある。
 同社では、このADR-001 の開発を進め、非代償性肝硬変に対する治験を実施しおり、ADR-001の静脈内投与に対する安全性に関するデータを蓄積している。だが、非代償性肝硬変患者での結果であるため、COVID-19 重症肺炎患者での安全性は別途確認する必要があると考えている。
 また、ADR-001は、活性化したマクロファージでの炎症性サイトカインの産生抑制をin vitroで確認するなど、感染性の炎症に対する効果も確認されている。
 治験計画の概要は次の通り。
・試験内容:SARS-CoV-2感染に起因する重症肺炎症患者を対象とした ADR-001 の探索的試験
・対象疾患(予定):SARS-CoV-2 感染に起因する重症肺炎
・試験デザイン(予定):単群、非無作為化、非盲検試験
・主要評価項目(予定):安全性
・投与方法(予定):静脈内点滴投与
・予定症例数 :6 例
・治験届提出予定 :2020 年 6 月末
・治験実施予定期間:2020年8月~2021年12月

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