新型コロナ含むウイルス迅速診断法で日大等と業務提携   塩野義製薬

 塩野義製薬は22日、日本大学、群馬大学、東京医科大学との間で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を含むウイルスの新規迅速診断法に関するライセンス契約に合意したと発表した。今後、同社は公的機関やアカデミア、パートナー企業と連携し、同診断法の実用化に向けて取り組んでいく。
 SARS-CoV-2の世界的な蔓延による社会の混乱が続く中、発症者のみならず、未発症者や潜伏期間にある感染者からの感染拡大が感染制御の上で大きな問題となっている。現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を診断する検査法としては、鼻腔や咽頭、唾液から採取した検体からウイルスの核酸を検出するPCR法(ポリメラーゼ連鎖反応)や抗原検査キット等が用いられている。
 とはいえ、これらの検査法では、専用測定器の必要性や、測定の簡便性、迅速性、検体採取時の医療従事者の感染リスク等、依然として多くの課題が残っている。そのため、これらの課題を解決した高感度かつ安価な診断法が求められている。

 SATIC 法の基本原理


 日本大学、群馬大学、東京医科大学からなる共同研究チームは、これまでにない全く新しい革新的核酸増幅法(SATIC法)によるウイルス迅速診断法の開発に成功した。SATICは、特定の遺伝子のみならず、変異遺伝子、さらにはタンパク質や代謝物などの生体内分子も、簡便な手法で特異的かつ高感度に測定できる技術だ。SATIC法を感染症の原因となるウイルスに適用した迅速診断法は、次の特徴の全てを兼ね備えている。

判定までのフロー(手順)


・SARS-CoV-2やインフルエンザウイルスの感染の有無を、検出機器を必要とせず目視で容易に判定可能
・検体採取から25分程度で判定可能
・ 偽陽性反応等の非特異反応がなく、PCR法と同等の高い感度
・鼻咽頭ぬぐいの綿棒のみでなく、唾液や喀痰からの検出が可能であるため、患者の侵襲性が低く、検体採取に伴う医療従事者の感染の危険性が限りなく低減され、さらに唾液の場合、患者本人による検体採取も可能

PCR法による検査結果
SATIC法による検査結果
 


 塩野義製薬は、本年6月3日にSARS-CoV-2既感染者数の把握等を目的とした研究用試薬として、新型コロナウイルスIgG/IgM抗体検出キットを発売している。一方、今回の診断法では、COVID-19やインフルエンザウイルス感染症等の検査時点での感染の有無を短時間で簡便に知ることが可能である。同診断法を実用化した際の適応としては、クリニック等の医療機関・検疫での感染の有無の把握や、将来的には、海外からの渡航者の感染者のスクリーニングが想定される。これまでSATIC法が有する特徴の全てを併せ持つ検査法はなかったため、同検査法の活用により、迅速かつ簡便に、症状のない方を含めたSARS-CoV-2感染者の診断が行われるようになる。その結果、国内感染者動向をタイムリーに把握できるという公衆衛生学的利点とともに、早期診断による重症化予防対策や、治療薬の早期投与が可能となる利点が期待される。

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