大阪府薬剤師会は8日、定例記者会見を開催し、藤垣哲彦会長が現状のオンライン診断および調剤に言及。「今は新型コロナウイリス感染の危険性があるのでやむを得ない」とした上で、「ウイルス感染拡大が一段落しても、医師が顔も見たことのない患者の処方箋を書き、薬局が調剤するやり方がこのまま定着するのを懸念している。そうなれば、医療崩壊につながる危険性がある」と警鐘を鳴らした。
また、新型コロナウイルスの軽症感染者を対象とする大阪市内の宿泊療養施設3施設への対応を、6月1日よりこれまでの会営中央薬局から近隣の薬局に移譲したとことや、尾島博司氏の大阪府薬剤師連盟会長就任も報告した。
新型コロナウイルス感染拡大下でのオンライン診療は、「患者が病院・診療所などの医療機関で電話による診察を受けて、医師が患者から希望された薬局に処方箋を電送し、薬局が処方して患者家族に手渡す、あるいは配達する」というもの。
オンライン診療と言っても電話のみの診断が可能なため、顔も見たことのない患者の処方箋を医師が書き、薬剤師が調剤しているケースも珍しくない。平常時のオンライン診療は、「3カ月に1回面談で診療」、「緊急時に医師がおおよそ30分以内で行ける距離」などの条件の下、スタートを切ったのは記憶に新しいところだ。
藤垣氏は、「今は、感染の危険性があるのでやむを得ないが、オンライン診療も調剤も、対面が基本原則である」と断言。その上で、「初診でも患者に対面せずに対応するやり方が定着すれば、皆保険医療が崩壊していく可能性がある」と警鐘を鳴らした。また、コロナウイルス拡大で大阪府下の薬局の収入は、「4月は対前年同期比10数%程度減少した。処方箋枚数・技術料は減り、薬剤量のみ増加しており、全ての薬局が影響を受けている」と報告し、「特に小児科、整形外科の処方箋の落ち込みが大きい。5・6月はさらに減少する」と予測した。
一方、新型コロナウイルスの軽症感染者を対象とする大阪市内の宿泊療養施設は、スーパーホテル大阪天然温泉(大阪市西区)、アパホテル大阪肥後橋駅前(大阪市西区)、大阪アカデミア(大阪市住之江区)の3施設で、現在の施設利用者は合計6名(6月5日現在)。ちなみに、これまでの同施設入居対象となる軽症感染者数は400名に上るが、実際の入居者は判っていない。
これら3宿泊施設は、医療機関ではないため、その場で医師は処方箋が切れず、薬剤師も調剤することはできない。そこで、宿泊施設に入居した患者のかかりつけ医が処方箋を書き、調剤は4月19日から5月末までは大阪府薬会営中央薬局が担当。日・祝は、大阪府薬執行部の薬局が行う形式が取られていた。6月1日からの調剤は、会営中央薬局から3施設の近隣の3薬局に移譲された。
乾英夫副会長は、これまでの会営中央薬局での対応について、「軽症感染者の処方は、宿泊施設に入居してから発症した急性疾患に対応するもので、『ストレスのために皮膚がかゆくなった』、『歯が痛くて眠れない』、『睡眠薬がほしい』などがあった。この1カ月半の間に、合計6件の処方箋に対応した」と話す。
これらの患者に対する服薬指導についても、「各ホテルに大阪市の担当者が滞在しているものの連絡が取り難いので、患者の携帯電話に直接電話して行った」(乾氏)
また、尾島博司氏(現大阪府薬副会長)は、5月23日に開催された大阪府薬剤師連盟評議員会で、同連盟会長に就任した。尾島氏は、大阪府薬連盟幹事長13年、日薬連盟副会長3期6年務めた実績があり、「こうした経験で、自民、公明、維新の議員との連携が取れるようになった。薬剤師職能を発揮するための要望については、社団法人の大阪府薬は行政、連盟は議員に行うという形を明確にして、同じ目標に向かって前進していきたい」と明言し、「そのためには、乾新会長との連携を密にしながら、やっていく所存である」と抱負を述べた。
今回の定例会見が最後となった藤垣氏は、5期10年の会長職を振り返り「役員と職員に助けられた10年の一言に尽きる」と感謝の意を表明した。