完全自律走行型UVDロボットの感染予防効果に期待

完全自律走行で病室の病原体を除去する UVDロボット (中央)

 昨今、新型コロナウイルス感染防止策の一つとして、消毒処理による衛生環境維持が不可欠となっている。こうした中、病院や学校、ホテルなどの感染性ホットスポットに、完全自律走行で集光したUV-C光(波長254nm)を照射し、完全自動で病原体を除去する「UVDロボット」が注目を集めている。
 UVDロボットは、デンマークのベンチャーキャピタル「ブルー・オーシャン・ロボティクス」の支援を得て、「デンマーク テクノロジカル 研究所」とデンマーク第二の都市オーデンセにある「オーデンセ大学病院」が、院内感染防止を目的に2016年に共同開発したもの。
 2017年より上市され、2019年には「ロボットオブザイヤー」を受賞している。「人の命を救う直接的なロボット」として評価されたのが受賞理由で、今までに直接人命にかかわるロボットの存在はなかった。

田島氏


 デンマークからのUVDロボット輸入元のカンタム・ウシカタ(本社:神奈川県)ロボティクス事業部営業課長の田島高広氏は、「紫外線を用いた消毒用装置の開発はこれまで主に米国で行われてきた。だが、全てが手動の固定式で、自由自在に動くUVDロボットの登場は世界で初めて」と強調する。
 紫外線波長254nmは、最もDNAに吸収され易く、DNAを破壊する力が大きい。従って、ヒトは絶対に浴びてはいけない。もし、浴びてしまうと、「肌の炎症」、「目の疾患」などを惹起する危険性がある。
 今までの固定式の紫外線消毒用装置による殺菌は、清掃スタッフが装置を設置して消毒終了を室外で待ち、光線が出ていないことを確認した後に、次の場所に装置を移動させる必要があり、効率が悪い。
 一方、完全自律移動のUVDロボットは、「清掃スタッフがアプリからUVDロボットに指令」→「UVDロボットはエレベーターに乗り、ドアを開ける」→「UVDロボットが殺菌を指示した部屋に入室」→「清掃スタッフによるセキュリティチェックの確認」→「UVDロボットが部屋を消毒(10~15分)」、「作業が完了するとUVDロボットが通知」→「報告書が作成され、UVDロボットは戻って来る」という手順で通常の清掃作業をサポート。簡便で効率が良く、しかも安全性・信頼性が高く、衛生環境維持の働き方改革を実現する。消毒時間も、トイレを含めて25㎡の病室の場合10分で完了できる。
 田島氏は、UVDロボットの特徴として、①完全自律移動して病室や手術室のなどの感染性スポットに集光したUV-C光を照射し、効率よく安全に消毒作業を展開、②細菌やウイルスのDNA構造を破壊するため、病原体の周囲への拡散を減らして感染防止、③院内感染率と運用コストの低減、④対象物に消毒用装置が近づけば近づくほど殺菌効果は高く、UVDロボットは自動で全ての対象物に十分近づき消毒作業を行う、⑤全てのバクテリアの99.99%を除菌⑥院内感染率と運用コストを低減ーを挙げる。
 また、UVC光による消毒技術は、手動洗浄プロセス後にまだ残っている「クロストリジウム・ディフィシル(c.diff)」、「黄色ブドウ球菌」、「メチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)」、「バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)」、「ノロウイルス」「単純ヘルペスウイルスやインフルエンザウイルスを始めとするエンベロープウイルス」などの病原体を除去することが、英国のマンチェスター・メトロポリタン大学の研究論文で報告されている。
 気になる新型コロナウイルスに対する殺菌効果については、バル・エドワーズ・ジョーンズ氏(マンチェスター・メトロポリタン大学医学微生物名誉教授)が、「コロナウイルスは、プラス鎖RNAを有するエンベロープウイルスであり、同ウイルスに対するUVC光の殺菌効果は証明されている」と報告する。
 さらに、「一般にMERSCoVおよびMHV-A59(コロナウイルスマウス肝炎ウイルス)に対するUVCの有効性は証明されている」と紹介し、「これらの理由から、新型コロナウイルスに対するUVCの菌効果が推定できる」とパーソナルステートメントを発している。
 実際、2019年の世界のUVDロボット納入実績は35台であったが、新型コロナウイルス拡大に伴い、本年に入ってから中国の2000病院に対して2300台が納入された。
 日本での導入台数は、現在、8台(内病院6台)であるが、田島氏は、「今後、病院以外にも、ホテルや学校、新型コロナウイルス感染者の宿泊療養施設への導入を拡大していく」方針を示す。
 また、カンタム・ウシカタでは、病院や新型コロナウイルス感染者の宿泊療養施設などを対象に、デモ機のUVDロボット1台の順次貸し出しを計画している。「貸出期間は最長3日間で、当該施設には同社が技術指導を行い、スタッフに運用してもらう内容になっている」(田島氏)。
 UVDロボットの主な概要は次の通り。
 ◆最高速度:5.4km/h
 ◆バッテリー充電時間:3時間
 ◆全重量:140kg
 ◆寸法:L93×W66×H171(cm)
 ◆稼働時間:2~2.5時間
 ◆消毒可能範囲:360度
 ◆消毒時間:10~15分/1部屋
 ◆接続:ワイヤレス(Wi‐Fiベース)
 ◆UV波長:254nm(UV-C波)
 ◆充電要件:AC100V~230VAC、50Hz-60Hz、6A
 ◆安全性:ソフトウェア&センサベース 非常停止ボタン
 ◆価格:1500万円~

タイトルとURLをコピーしました