塩野義製薬は26日、同日付けでTetra社の全株式を取得し、完全子会社化すると発表した。25日開催の取締役会で決議したもの。
Tetra社は、脆弱X症候群(FXS)、アルツハイマー型認知症(AD)、外傷性脳損傷、その他の脳疾患に対する治療薬を開発するバイオテクノロジー関連の研究開発型企業である。
塩野義製薬は、2018年12月に認知機能改善薬候補BPN14770のライセンスならびに出資契約をTetra社と締結し、日本、韓国、台湾における独占的開発・製造・販売権を獲得するとともに、同化合物の研究開発を協力して推進してきた。 米国においては、Tetra社がFXS患者とAD患者を対象としたP2試験を実施し、このたび完了した。また、2020年3月には、両社の提携をさらに強化すべく、一定の条件を満たした場合に塩野義製薬がTetra社を完全子会社化する合併契約を締結していた。
同P2試験は、BPN14770を10mgまたは25mg、早期AD患者に対して1日2回、13週間経口投与し、有効性と安全性をプラセボ群と比較した二重盲検、無作為化、並行群間比較試験である。主要評価項目として、治療13週後におけるRepeatable Battery for the Assessment of Neurological Status-Delayed Memory Index(RBANS- DMI)スコアのベースラインからの変化量を評価した。
その結果、BPN14770 10mgおよび25mg投与群は、プラセボ投与群との比較において、いずれも主要評価項目であるRBANS-DMIスコアの有意な改善は示さなかった。
その一方で、部分集団解析を行った結果、25mg投与群の臨床的認知症重症度判定尺度(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes:CDR-SB)のベースラインスコアが中央値以上の患者集団において、投与13週目のCDR-SBスコアの有意な改善(p=0.0295)を示した。このことから、同薬のADおよび他の適応(例 開発進行中のFXS)における開発を継続する意義があると判断した。
安全性に関しては、同試験でも、特に臨床上問題となる有害事象は認められなかった。さらに、Tetra社の有する中枢神経系の創薬ノウハウの塩野義製薬研究開発への活用も期待できるため、Tetra社の全株式を取得し、完全子会社化することになった。
Tetra社の子会社化により、塩野義製薬はBPN14770およびTetra社が現在保有する全化合物のグローバルにおける権利を獲得する。なお、塩野義製薬では、Tetra社の完全子会社化が2020年度連結業績に与える影響は現時点では軽微としている。今後、状況の変化により、業績に与える影響を認識した時点で速やかに公表する。