武田薬品のクリストフ・ウェバー代表取締役社長 CEOは13日、オンラインによる2019年度決算説明会で会見し、「2019年度は、武田薬品にとって非常に大きな年となった。ワンタケダとなって堅実な業績を残し、2020年度の勢いある成長、ひいては長期的な成功に向けての展望に自信を深めている」と強調した。年間配当180円の維持についても「尽力する」と明言した。
シャイアー社買収後最初の通期である2019年度の財務ベース売上収益は、3 兆 2912 億円(対前年比57%増)となった。財務ベース営業利益は、非資金性の買収関連費用の影響があったものの、当初のガイダンスを上回り1004億円に到達。コア営業利益は 9622 億円(同110%増)となった。また、コストシナジー目標を23億米ドルに引き上げ、負債の迅速な返済を順調に進め、ノン・コア資産の売却を継続する。フリー・キャッシュフローは大幅に増加し9680億円(同156%増)となり、1株当たり180円の確立された配当方針の維持が可能となった。2019年度の当期利益は442 億円。
2020年度の財務ベース営業利益予想は、前年度の3倍以上の3550億円で、同社の勢いある成長は本年度も継続し、中期的にはさらなる加速を期待させる。
武田薬品は、成長製品を有する主要な5 つのビジネスエリアとして、消化器系疾患(2019年度売上収益の 21%)、希少疾患(同20%)、血漿分画製剤(同 12%)、オンコロジー(同 13%)、ニューロサイエンス(同 13%)に注力するとともに、同5領域における有望な治療薬となり得る強固な研究開発パイプラインを有している。
具体的には、14のグローバルブランドについて、適応拡大/地域拡大を目指して20以上の臨床試験を実施中。中国で、今後5年間で15品目以上の承認取得を見込む事業拡大を計画している。2024年度までに承認の可能性がある 12のベストインクラス/ファーストインクラスの新規候補物質および申請を可能にする9つの臨床試験を進行している。臨床早期の約30の新規候補物質と次世代基盤技術による持続的成長(2025 年以降)も見逃せない。既に実施中の200 を超えるパートナーシップに加え、2019年度においてバイオベンチャーやアカデミアと新たに38の共同研究開発を開始している。
同社の地理的プレゼンスは、現在、米国(2019 年度売上収益の48%)、日本(同18%)、欧州・カナダ(同20%)、成長新興国市場(同14%)で、世界のバイオ医薬品産業の成長機会と一致している。
ウェバー氏は、「規模拡大により、主要市場において革新的な治療薬を開発して上市することで、当社の競争力が高まり成長基盤が強化される」と断言。さらに、「当社のパイプラインは、フォーカスを絞ったポートフォリオとなっており、コロナウイルスのインパクトを受けにくい」と言い切る。
新型コロナウイルスの治療薬開発にも言及し、「当社のパイプラインを通して模索している」と報告。さらに、同ウイルスによる重篤な合併症のリスクを有する患者の治療薬となり得る高度免疫グロブリン製剤も、「グローバルあるいはローカルで血漿分画製剤に携わる企業と共有して、早急に開発を進めている」
高度免疫グロブリン製剤は、既に臨床試験製剤の製造を開始しており、本年7月に臨床試験がスタートする。ウェバー氏は、「成功すれば、最も早く承認を受ける新型コロナウイルス治療薬の1 つとなる可能性がある」と期待を寄せる。