小野薬品の相良暁社長は12日、決算説明会で会見し、現在、売上高でキイトルーダ(メルク)の後塵を拝しているオプジーボについて「東アジアに多い消化器系がんおよび、肺がんの一次治療の効能追加により、巻き返しを図っていく」考えを強調した。また、2020年度には、合計4品目の新製品上市を予定していることも明らかにした(売上予想額は合計50億円)。
免疫チェックポイント阻害剤の国内市場は、その半分をキイトルーダが占め、残り半分をオプジーボ7割、テセントリク(中外)3割の構成比で形成されているのが現状だ。
相良氏は、「業界評価では、キイトルーダとオプジーボの戦いは勝負あったと見られているようだが、我々はそうは思っていない」と強調し、「今後、国内発のファースト・イン・クラスの免疫チェックポイント阻害剤として、巻き返しを図る」と言い切った。
その具体策として、まず、「東アジアに多い消化器系がんの効能追加」を挙げる。本年2月には、免疫チェックポイント阻害剤として初めて「食道がん」での適応追加を取得した。これを皮切りに、「大腸がんも含めた消化器系がんにおける効能拡大を進めていきたい」と力説。「これまで、BMSとの共同治験でオプジーボの効能拡大を進めてきたが、消化器系がんに関しては我々だけの治験を東アジアで実施する」方針を明かした。
世界中で最も患者数の多い肺がんについても、「一次治療の効能取得で大変苦労したが、負けっ放しではいけない」と断言。肺がんの一次治療では、現在、いくつかの使い方を申請しており、「これらが承認されれば、大きな武器になる」と力説した。
オプジーボの売り上げ高は、2019年度873億円、2020年度900億円(予想)であるが、「肺がんの一次治療に加えて、消化器系がんの効能追加が増えて行けば、2021年度は1000億円を突破する可能性がある」と期待を寄せる。
一方、2020年度上市予定の期待の新製品は、「ベレキシブル(中枢神経系原発リンパ腫)」、「オンジェンティス(パーキンソン病)」、「エドルミズ(がん悪液質)」、「ジョイクル(変形性関節症)」の4品目。
ベレキシブルとオンジェンティスは上半期、エドルミズとジョイクルは下半期の発売を計画しており、4製品で合計50億円の売上高を見込んでいる。
相良氏は、基礎論文で新型コロナウイルス感染症に効果があると報告された「フオイパン」(慢性膵炎・術後逆流性食道炎治療薬)にも言及した。「ヒトに効くのか、ヒトへの投与量はどうなるのかがポイントで、我々ではっきりさせる必要があると考えている」と断言。
その上で、「現在、臨床試験のプロトコールの検討を始めており、速やかに検討していく」考えを示した。フオイパンは、薬価(1錠)20円、ジェネリック8円で、「採算ベースに乗らないが、新型コロナウイルス感染症に効果があるかどうかの確認は、社会的意義が大きい」
新型コロナウイルス感染症の影響では、生産部門は、「従来通り継続している。今、仮に全ての生産が止まっも半年分のストックがあり、安定供給に問題はない」
営業部門は、「医療機関への訪問を全面的に自粛し、これを継続している。今のところ目に見えた影響は出ていないが、今後、新製品の上市も予定しており、何時まで続くか懸念される」
開発部門は、「欧米は、ほぼ全てエントリーが止まっている。国内も同様で、中長期的な影響が少なければ良いと考えている」
研究部門は、「在宅勤務を進めているので、いくばくか止まっている。再開すればすぐに始められるテーマをまとめているが、中期的に影響が出る可能性はある」
業績への影響については、「外来の患者は減っているものの、医療機関に来られる患者は長期処方に移行していると聞いている。医薬品の売り上げには、影響が出ていない」と述べた。