季節性インフル予防植物由来VLPワクチン米国では申請せず    田辺三菱製薬

 田辺三菱製薬は28日、連結子会社のメディカゴ社(本社:カナダ)が開発中の季節性インフルエンザ予防を植物由来VLPワクチン(MT-2271)について、米国での承認申請を行わないことを決定したと発表した。MT-2271のP3試験結果を踏まえて、米国での開発計画を変更したもの。同計画変更にともない、MT-2271に係る無形資産(仕掛研究開発費)の約240億円を減損損失(非経常項目)として2020年3月期決算において計上する。MT-2271はカナダにおいて承認審査中で、カナダの開発計画に変更はない。

 MT-2271のP3試験は、成人(18-64歳)および高齢者(65歳以上)を対象に実施された。成人を対象とした臨床試験では、主要評価項目の成功基準を満たさなかったものの、プラセボより優位なインフルエンザ発症抑制効果を確認している。
 また、高齢者を対象とした臨床試験では、対照薬である鶏卵ワクチンとの非劣性を示し、主要評価項目の成功基準を満たす結果となった。これら両試験では、安全性について特に問題はなかった。だが、メディカゴ社が米国FDAと協議を進めた結果、追加の臨床試験の実施を求められたため、米国での承認申請を行わないことに決定した。
 P3試験結果については、メディカゴ社から改めて詳細が公表される。臨床試験ではプラセボや対照薬(鶏卵ワクチン)との比較において一定の有効性が確認できており、植物由来VLPプラットフォーム技術のメリットを勘案し、現行の製剤よりもさらに有効性を向上させる改良を行うべく、アジュバントを加えた季節性インフルエンザワクチンの開発について新たに検討を開始している。アジュバントは、医薬品の効果を高めたり補助したりする目的で併用される物質で、ワクチンとともに投与することで免疫原性の向上が期待できる。

新型コロナ感染防止植物由来VLPワクチン創製に成功

 また、メディカゴ社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対応したVLPの作製に成功したことを先般発表しており、新型コロナウイルス感染防止に向けた早期のワクチン開発に貢献すべく、田辺三菱製薬としても引き続き同社を支援すると共に、植物由来VLPワクチンのさまざまな可能性を追求していく。

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