兵庫県養父市(市長:広瀬栄氏)と塩野義製薬は10日、地域医療の向上にかかる連携協定を締結したと発表した。同締結により、国家戦略特別区域の指定受けている養父市と塩野義製薬両者は、それぞれの強みを活かして密接に連携し、特区提案の実現や保健衛生施策の充実など、地域医療の向上のための取り組みを推進していく。
今回の締結による具体的な取り組み項目としては、①地域住民の医療アクセシビリティ向上②感染症の予防、拡散防止③その他地域住民の健康維持ーが挙げられる。
①では、国家戦略特区養父市による医療分野に関する規制改革提案の実現に向けた連携、②は、感染症の予防等に関する啓発セミナーの開催などを実施する。③では、継続的な両者の協議を通じて新たな取り組みを企画実行する。
養父市は、日本の国土の約70%ともいわれる中山間地域が持つ様々な課題解決のため、2014年5月に国家戦略特別区域の指定受けた。以降、農業分野をはじめとし医療分野や公共交通分野など、多岐に亘る規制改革に取り組んできた。このうち、医療分野における「テレビ電話による服薬指導の特例」の取り組みを通じて、テレビ電話の最大の特徴である「遠隔(隔離)環境」の感染拡大防止への有効性や、インフルエンザ診断キットの使用方法が比較的簡便になりかつ判定精度も充分高いことなどが実証された。
そこで養父市は、インフルエンザウイルス感染症に対してテレビ電話を使った診療と服薬指導の一貫したオペレーションが選択できるよう、国家戦略特区の新たな規制改革メニューとして「自宅完結型インフルエンザオンライン診療」を国に提案、実現を目指している。
一方、塩野義製薬は、「創薬型製薬企業として社会とともに成長し続ける」を経営目標に掲げた中期経営計画SGS2020の中で、「世界を感染症の脅威から守る」を取り組むべき社会課題の一つにあげており、そのために必要な感染症治療薬の研究・開発および感染症治療薬の適正使用推進に尽力している。
2016年4月には「バイオマーカー研究開発部」を新設し、診断薬の開発や予後管理などにも取り組んでいる。また、感染症薬の適正使用推進のためには、疾患や感染予防などの正しい知識の普及が不可欠であるため、一般人や医療従事者向けの啓発活動にも積極的に取り組んでいる。
こうした中、持続可能な社会を実現するために、社会課題に対する取り組みの必要性が年々高まってきた。2015年には、2030年までの国際目標として、持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)が国連サミットで採択され、この目標に対する貢献が求められている。
養父市と塩野義製薬は、同協定のもと、中山間地域や離島・僻地等の医療資源の限られる地域の抱える課題解決に向け、両者が持つ強みを持ちより、特区提案の実現や保健衛生施策の充実など、地域医療の向上のための取り組みを推進していく。