新規シデロフォアセファロスポリン抗菌薬FETROJA米国で販売開始     塩野義製薬

 塩野義製薬は25日、新規のシデロフォアセファロスポリン抗菌薬「FETROJA(フェトロージャ)」(一般名:セフィデロコル)について、24日(米国東部時間)付で米国での販売を開始したと発表した。
 適応症は、他の治療選択肢が無いもしくは限られた18歳以上の患者における、グラム陰性菌による腎盂炎を含む複雑尿路感染症治療。
 同剤は昨年11月14日にFDAより承認されたグラム陰性菌の抗菌薬に対する複数の耐性獲得機序を克服した新規のシデロフォアセファロスポリン抗菌薬。 カルバペネム系抗菌薬に耐性を示す腸内細菌科細菌、緑膿菌、アシネトバクター・バウマニおよびステノトロホモナス・マルトフィリアを含む、既存薬に対する耐性を獲得したグラム陰性菌感染症の増加は医療における重要課題となっている。
 これらの感染症の既存薬での治療は困難であり、致死率も増加している。米国では、年間少なくとも280万人が薬剤耐性菌に感染し、そのうち少なくとも3万5000人の死亡が報告されている。何らかの手立てを打たなければ、2050年までに薬剤耐性菌感染症による全世界での死亡者数は1000万人、GDPに対する影響は100兆米国ドルにも及ぶとの予測もある。
 こうした中、カルバペネム系抗菌薬に耐性を示す腸内細菌科細菌、緑膿菌、アシネトバクター・バウマニを含むグラム陰性菌に対する新たな抗菌薬の研究開発は、世界保健機関および米国疾病予防管理センターにより最優先事項と考えられている。
 塩野義製薬では、「フェトロージャが、重要な社会課題である多剤耐性菌感染症に対する有望な治療選択肢になる」との考えを示している。
 フェトロージャは、多剤耐性菌を含むグラム陰性菌の外膜を効果的に通過して抗菌活性を発揮する。細菌のカルバペネムへの耐性獲得に関連する3つの主な機序(ポーリンチャネルの変異による膜透過性低下、bラクタマーゼによる不活化、排出ポンプの過剰産生)による影響を受けずに抗菌力を発揮するのが特徴である。鉄と結合する独自の構造を有することで、細菌が養分である鉄を取り込むために利用する鉄トランスポーターを介し、細菌内に能動的に運ばれる。
 その結果、フェトロージャは、細菌のペリプラズム内に効率よく取り込まれ、細胞壁合成を効率的に阻害する。また、フェトロージャは、ESBLs、AmpC、セリン型およびメタロ型カルバペネマーゼなどの問題となっているbラクタマーゼを産生する細菌に対してもin vitro活性を示す。グローバルで実施した感受性サーベイランス試験において、フェトロージャは、カルバペネム系抗菌薬に耐性を示す緑膿菌、アシネトバクター・バウマニ、ステノトロホモナス・マルトフィリアおよび腸内細菌科細菌を含むグラム陰性菌に対し、in vitro下で広い抗菌スペクトルを示す。これに対して、同剤は、グラム陽性菌および嫌気性菌に対してのin vitro活性は強くない。
 なお、塩野義製薬は、欧州における製造販売承認も申請しており、2019年3月に受理されている。

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