武田薬品は25日、現在実施中のデング熱ワクチン(TAK-003)のグローバルP3試験(TIDES試験)の18か月データを、米国熱帯医学会(ASTMH)で公表したと発表した。
今回公表されたデータでは、特に12ヵ月追跡時の成績やワクチン接種前の血清反応が陰性の被験者における有効性と一貫した結果の取得が大変意義深かった。
また、TAK-003は、特にワクチン接種前の血清反応が陰性のデング3型ウイルスに対する有効性・安全性のプロファイルを完全に理解するにはさらなるデータが必要となるが、同剤によるデングウイルス感染歴を有さない人々への感染や入院を予防できる可能性が確認できた点も注目されている。
TAK-003の初回接種3ヵ月後に2回目を接種した後、18ヵ月の追跡期間で得られた今回のデータには、ワクチン有効率(VE)に関する最新情報と、デングウイルスの血清型別、ワクチン接種前の血清反応(デングウイルス感染歴の有無)別および重症度別の有効性に関する副次評価項目の解析結果が含まれる。
TIDES試験では、解析に十分な発症例数を収集し、全ての副次評価項目を満たした。同パート2のVEおよび安全性に関する結果は、パート1の主要評価項目の解析で報告されたデータと一貫性のある結果を示した[接種2回目以後18ヵ月間追跡におけるVE:73.3%(95%信頼区間:66.5%~78.8%),p<0.001、接種2回目以後12ヵ月間追跡における主要評価項目解析時のVE:80.2%(95%信頼区間:73.3%~85.3%)]。
New England Journal of Medicine(NEJM)に掲載された、主要評価項目であるVEの解析結果では、デングウイルスの感染歴に関係なく、4歳から16歳の小児・若年層におけるウイルス学的に確認されたデング熱感染(VCD)に対する予防効果が示されている。
副次評価項目の解析では、デング熱による入院に対するVEは90.4%(95%信頼区間:82.6%~94.7%,p<0.001)で、デング出血熱に対する有効性は85.9%(95%信頼区間:31.9%~97.1%)であった。
重症VCDに対する有効性は、発症例数が少なかったため判定できなかった(VE:2.3%、95%信頼区間:-977.5%~91.1%)。
デングウイルスの感染歴がある被験者とない被験者におけるVEは同様の成績を示した[それぞれ76.1%(95%信頼区間:68.5%~81.9%)、66.2%(95%信頼区間:49.1%~77.5%)]。
VEはデングウイルスの血清型によって異なっており、デング1型ウイルスでは69.8%(95%信頼区間:54.8%~79.9%)、デング2型ウイルスでは95.1%(95%信頼区間:89.9%~97.6%)、デング3型ウイルスでは48.9%(95%信頼区間:27.2%~64.1%)。デング4型ウイルスについては、現時点で有効性を適切に評価するには同型による発症例数が不十分であった(VE:51.0%、95%信頼区間:-69.4%~85.8%)。引き続き、試験期間を通じて有効性の評価を行う。
VCDにおける探索的エンドポイントの解析では、ワクチン接種前の血清反応が陽性(感染歴有)の被験者および陰性(感染歴無)の被験者で同程度の有効性が示されており、デング1型ウイルスに対するVEはそれぞれ72.0%(95%信頼区間:52.2%~83.6%)、67.8%(95%信頼区間:40.3%~82.6%)、デング2型ウイルスに対するVEはそれぞれ93.7%(95%信頼区間:86.1%~97.1%)、98.1%(95%信頼区間:85.8%~99.7%)であった。 デング3型ウイルスについては、ワクチン接種前の血清反応が陽性の被験者におけるVEは61.8%(95%信頼区間:43.0%~74.4%)、陰性の被験者におけるVEは-68.2%(95%信頼区間:-318.9%~32.4%)であった。
ワクチン接種前の血清反応が陰性の被験者におけるデング3型ウイルスに対するVEについては、統計学的に結論付けることはできないものの、有効性がみられない可能性が示唆された。
デング4型ウイルスに対する有効性は、発症例数が少数であったため評価不能でした。3型および4型に対するTAK-003の有効性は、計画されている追跡調査にてさらに検討を進める。
主要評価項目の解析結果と同様にTAK-003の忍容性は全般的に良好で、現時点で重大な安全性の懸念は報告されていない。
TIDES試験は継続実施中であり、引き続きトータル4.5年間にわたり安全性および有効性を検討する。現時点で、TAK-003は世界中のいずれの国や地域においても製造販売承認を受けていません。
ASTMHで武田薬品は、2件のオーラルプレゼンテーション、9件のポスタープレゼンテーションを行った。その発表の中には、同社が開発中のジカウイルスワクチンのP1試験(ZIK-101試験)の成績も含まれている。ZIK-101試験は、18歳から49歳までの240人の男性および女性被験者を対象に、ジカウイルスワクチンの安全性と免疫原性を評価する、無作為化、プラセボ対照二重盲検臨床第1相試験で、同ワクチンの開発を進めるに必要な複数の投与量での評価を含んでいる。
武田薬品は、米国保健福祉省の事前準備対応次官補局の一部門である生物医学先端研究開発局の支援のもと、同ジカウイルスワクチンの開発を実施している。