小野薬品は19日、HCNチャネル遮断薬「コララン錠(一般名:イバブラジン、2.5mg、5mg、7.5mg)」を新発売した。同剤の効能効果は、「洞調律かつ投与開始時の安静時心拍数が75回/分以上の慢性心不全(ただし、β遮断薬を含む慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)」。ピーク時売上予想は、57.5億円(発売10年目、対象患者数5.6万人)。
心不全は、なんらかの心臓機能障害が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果、呼吸困難、疲労や浮腫が出現し、それに伴い運動耐容能が低下する。慢性心不全は、心不全の状態が慢性的に続くもので、国内での慢性心不全の患者数は2020年には120万人に達すると推計されている。
現在、慢性心不全患者に対しては、症状コントロールや入院予防、死亡回避を目的に、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬、β遮断薬、抗アルドステロン薬、利尿薬等の治療薬が使用されている。
慢性心不全患者では、心臓が十分な血液量を拍出できないことを補うために心拍数が高くなる傾向にあり、それが長期にわたり継続すると心臓にさらに負担がかかる。また、高い心拍数は、慢性心不全患者の予後に悪影響を及ぼす。
コララン錠は、心臓の洞結節に発現する HCN(過分極活性化環状ヌクレオチド依存性)チャネルという心臓のペースメーカー電流の過分極活性化陽イオン電流(If)を阻害することで、心拍数を減少させる新規作用機序の経口剤で、フランスServier社が創製したもの。
心臓の伝導性、収縮性、再分極および血圧に影響せずに心拍数のみを減少させるので、既存の慢性心不全治療薬を服用しても心拍数が高い患者への新たな治療選択肢として期待される。
イバブラジンは、世界124カ国または地域で承認されており、そのうち116カ国で「慢性安定狭心症および慢性心不全」の両適応で承認されている。
小野薬品は、2011年9 月にServier社との間でイバブラジンに関するライセンス契約を締結し、日本における独占的開発・商業化権利を取得している。