武田薬品は6日、MDアンダーソンがんセンター(米・テキサス州)とB細胞性悪性腫瘍やその他のがんをターゲットとしたIL-15分泌促進型キメラ抗原受容体を発現した臍帯血由来NK(CAR NK)細胞療法に関し、独占的ライセンス契約ならびに共同研究開発契約を締結したと発表した。
同契約に基づき、武田薬品は、MDアンダーソンのCAR NK基盤技術へのアクセス権とCD19をターゲットとしたCAR NK細胞療法、B細胞成熟抗原(BCMA)をターゲットとしたCAR NK細胞療法を含む最大4つのプログラムの開発および販売に関する独占的権利を獲得する。
さらに、武田薬品およびMD アンダーソンは、これらのCAR NKプログラムの開発をさらに進展させるための共同研究を実施する。
来治療向けに早期提供可能なCARを提供するための新規手法は、MDアンダーソンの同種他家 CAR NK基盤技術により、臍帯血から分離したNK細胞を、特定のがんターゲットに対するCARが発現するよう改変するというもの。
CAR NK細胞には、レトロウイルスベクターを用いて遺伝子を組み込み、特定のがんを攻撃する効力を高める。CD19 CARは細胞のB細胞性悪性腫瘍に対する特異性を高め、さらには免疫サイトカインであるIL-15が体内でのCAR NK細胞の増殖や生存を促進する。
患者自身の遺伝子改変T細胞を作成するプロセスに数週間かかる既存のCAR-T細胞療法とは異なり、CAR NK細胞は他人のドナーから採取した細胞を用いて作成され、既製の細胞療法製品としてストックされることを企図しているため、より早期に治療を開始することが可能となる。
CD19 CAR NK細胞療法は、外来患者にも使用可能になる見込み。
現在実施中の再発・治療抵抗性B細胞性悪性腫瘍の患者を対象とした臨床第1/2a相試験では、既存のCAR-T療法で見られる重篤なCRS(サイトカイン放出症候群)や神経毒性は報告されていない。
現在実施中のCD19 CAR-NK臨床第1/2a相試験は、2021年に主要臨床試験への患者登録を開始予定で、外来患者への投与が可能な初めてのCAR細胞療法としての可能性が注目される。
MDアンダーソンのKaty Rezvani, M.D., Ph.D(Stem Cell Transplantation and Cellular Therapy教授)は、「我々のビジョンは、より多くの患者が効果的に、迅速に、最小限の毒性で治療を受けられ、外来治療も可能となるCAR NKの開発による既存の治療法の改善である」と強調。
さらに、「武田薬品は、血液がんに対する専門性と次世代細胞療法開発へのコミットメントを有しており、CAR NK細胞療法を必要とする患者に提供できるようにするための理想的なパートナーである」とコメントしている。