大日本住友製薬は24日、同社および應義塾大学などの共同研究グループがiPS細胞を用いた研究により、精神疾患に共通する病態を発見したと発表した。同発見は、双極性障害・ 統合失調症の病態解明、治療薬開発への応用に期待される。
共同研究は、慶應義塾大学医学部生理学教室の岡野栄之教授、大日本住友製薬株式会社リサーチディビジョン疾患 iPS創薬ラボの石井崇也研究員兼、同大学医学部生理学教室共同研究員、名古屋大学大学院医学系研究科精神医学・親と子どもの心療学分野の尾崎紀夫教授らを中心に推進されたもの。
ゲノムコピー数変異 (CNV)を有する双極性障害および統合失調症患者由来のiPS 細胞を用いた研究を行い、両疾患に共通した病態として、神経細胞の形態に異常が生じることを見出した。
同研究グループは、これらの精神疾患の病態解明を目指し、発症に関わると 考えられる新規のCNVに着目。
第一に、それぞれ異なる CNVをもつ双極性障害及び統合失調症患者の体細胞から取り出したiPS細胞 を2 種類の神経細胞(グルタミン酸作動性神経と GABA 作動性神経)に選択的かつ高効率に分化させる方法を確立した。
さらに、これらの得られた 神経細胞について解析し 、両疾患 に共通して、2 種類の神経細胞いずれにおいても樹状突起の長さが短くなり、神経情報を伝達するシナプス数も減少することを明らかにした。
今回の研究成果は、患者由来iPS細胞を用いることで、代表的な精神疾患に共通する病態の再現に成功したものであり、精神疾患のさらなる病態解明や治療薬候補の開発につながるものと期待される。
同研究成果は、本年9月20日にオンラインジャーナル「eNeuro 」に掲載された。