薬剤師の著しい環境変化に迅速・的確に対応   河上英治京都府薬会長に聞く

 国会継続審議となった薬機法改正案に「地域連携薬局」、「専門医療機関連携薬局」が盛り込まれるなど、超高齢化社会に向けて薬剤師・薬局を取り巻く環境は著しく変化している。こうした中、京都府薬剤師会では8年ぶりに新会長が誕生し、“環境変化に迅速・的確に対応できる新たな仕組み作り”をスタートさせた。そこで、新しい舵取り役の河上英治会長に、事業計画の特徴や今後の展望を聞いた。

 「歴代会長や役員、会員の皆さんが築き引き継いでこられた伝統や実績を継承した上で、薬局・薬剤師を取り巻く著しい環境変化に対応するための見直しも図っていきたい」河上氏は、開口一番会長就任に当たっての所信を表明する。
 京都府薬では、その具体的施策として、①役員体制の見直し②事務局体制の見直し③総合戦略会議の設置④委員会の見直し⑤その他(7月1日からの開館敷地内前面禁煙の実施など)ーを掲げている。
 中でも、特に目玉となるのが、「総合戦略会議の設置」だ。会運営のトップマネジメントを果たす「総合戦略会議」は、常務理事会メンバー、各委員会委員長(11委員会)、外部委員(京都大学赤池教授)で構成。
 3カ月に1回程度で開催(8月に第一回目開催)し、総合的・中期的視点に立った会務推進の方向性、経営的視点から資源の重点配分等についての論議を展開する。
 総合戦略会議内には、「薬機法改正への対応」、「健康サポート薬局の推進」、「会館問題の解消」、「会運営の健全化」の4つのプロジェクトを設置しており、これらのテーマを最重要事項として協議する。
 「健康サポート薬局」について河上氏は、「京都府医療計画で定められた“2023年までに50薬局”をできるだけ前倒しする方向で推進したい」と明言する。
 「会館問題の解消」は、「現在の京都府薬会館は、京都市の借地上に建っている」と説明し、「土地の買い取り、移転などを含めた可能性をコンサルティングに委託し、2年間をめどに方向性を決めたい」と話す。
 「会運営の健全化」では、「会員数の増加、収益事業の実施などを推進する」京都府薬と京都府病薬が統合して10年経過したが、会員数は、薬局薬剤師・病院薬剤師ともに同程度増加傾向にある。
 総合戦略会議による「各委員会の活動内容チェック」も見逃せない。これまで京都府薬では、10委員会が個別に担当事業を推進して結果のみ報告されていたため、どのような目標を立てて、きちんと達成したかの「アウトカム検証」は為されていなかった。
 統合戦略会議では、各委員会(11委員会)の目標立案やその進行状況を3カ月に一回チェックし、事業計画の迅速・確実な推進を促す。
 一方、京都府薬の19年度事業計画は、◆連携強化、◆薬局強化◆病院強化◆見える化◆組織強化ーを柱とし、補正後の予算額は2億7607万円。着実な事業執行のため、取り組んでいるところである。
 「連携強化」には、「入退院・外来時情報共有」、「医療安全・感染対策強化」、「生涯学習の支援」ーなどを掲げている。河上氏は、入退院・外来時情報共有について、「これまでは退院時の患者情報のみ病院と共有してきたが、今後は入院前の薬局の患者情報も病院と共有したい」と訴求する。
 加えて、「京都府内に入退院・外来時情報共有モデル地域(2地域程度)を作って、パイロットスタディを行う」構想も明かす。
 「薬局強化」では、「かかりつけ薬局の推進」、「地域連携薬局・専門医療機関連携薬局の推進」、「健康サポート薬局の推進」ーを目指す。
 「かかりつけ薬剤師・薬局の推進」については、「適正な医療提供における薬剤師の究極目標は、服薬情報の一元的管理に尽きる。薬局業務委員会が一丸となって、かかりつけ薬剤師・薬局育成に尽力したい」と強調する。
 その一方で、「かかりつけ薬剤師指導料を算定するには患者さんの同意書が必要となる。だが、巧みに同意書を取り付けるフィー獲得ありきの手法は、本来のかかりつけ薬剤師の理念を歪める」と警鐘を鳴らし、「服薬情報の一元化、24時間対応、在宅医療への取り組みなどは薬局・薬剤師が果たすべき重要な役割で、点数算定とは別に取り組む必要がある」と訴えかける。
 健康サポート薬局については、厚労省が今後日常生活圏域に1軒必要としているが、京都府内の健康サポート薬局数は15軒に留まる(日常生活圏域150)。
 河上氏は、「当面は、京都府医療計画で定められた50軒(2023年まで)を目標に、より前倒しで達成したい」考えを改めて強調する。
 京都府薬では、6月30日に「健康サポート薬局推進のための研修会」を開催し、これまでに健康サポート薬局研修を受けたが、まだ申請に至っていない30薬局が参加した。
 「研修会では、健康サポート薬局の薬剤師の講演や、ディスカッションが繰り広げられ、申請に対して何がネックになっているかが浮き彫りになった」と話す河上氏。
 申請の大きなネックとなっていたのは、「地域住民のための健康イベント教室」で、研修会ではその事例が報告され「安心した参加者も多かった」
 さらに、京都府や京都市の薬務課も同研修会に参加し、「承認基準や一人薬剤師の薬局での体制整備などを今後検討し、行政も一緒に健康サポート薬局を推進する」方向性が確認された。
 河上氏は、「研修に参加した30薬局については、今年度中に申請してほしい」と要望する。
 「病院強化」は、四方敬介副会長(京都府立医大病院)を中心とした病院業務委員会が、「タスクシフティングの推進」、「入退院・外来患者サポート機能の強化」、「欠員対策・地域偏在の対応」を推し進めていく。
 河上氏は、後発医薬品の使用促進にも言及し、「京都府薬務課では、後発医薬品を推進するため、医師向け、薬剤師向け、患者向けのアンケートを実施している」と紹介。
 その結果を踏まえて、京都府の後発品使用率低迷理由を「薬局が後発品使用体制加算を取る意欲を欠いている。先発品依存という京都人気質があり、それをマイナスに忖度して後発品を勧め難い背景がある」と分析する。
 後発品使用体制加算は、75%、80%、85%の3段階に細分化されているが、今後、75%未満で算定をしていない薬局にアンケートを実施し、「さらに課題を深堀することで、後発医薬品使用を促進していく」考えを示す。
 高額医薬品対策では、「薬局間で譲渡しないと経営を圧迫する」と断言し、「地域の薬剤師会の中で掲示板を作って一定のルールの下、譲渡し合う仕組み作りが必要だ」と言い切る。
 医薬品情報収集に関しても、「薬局にも、開発段階から市販後に至るまで常にリスクを適正に管理する“医薬品リスク管理計画(RMP)”を積極的に浸透させねばならない」と力説する。
 今、話題のポリファーマシー対策についても、「医師との人間関係が最重要である」とした上で、「薬局でまず可能な方法は同種同効品の重複投与で、2つ目は残薬が切り口となる」と指摘する。
 残薬を確認して、患者がほとんど飲んでない薬剤があっても疾患がコントロールされている症例では、「その薬剤は不要では」と提案できるからだ。
 3つ目は、「病院薬剤師が行っている各疾患のガイドラインに沿った処方提案」であるが、「街の薬局では診断病名もない中にあっては、なかなか難易度が高い」と話す。
 「ポリファーマシーも含めた地域医療では、多職種とのコミュニケーションが必要不可欠となる。大学でももっとコミュニケーション能力を高める教育をしてほしい」と要望する。
 京都府も重複投与をチェックする「あんしん安全服薬環境基盤整備事業」を展開しようとしている。同事業は、レセプトデータから複数の医療機関で一定期間、同種薬を処方されている患者を選出し、患者に通知を出して薬局で相談してもらうというシステムだ。
 最後に河上氏は、「今、全国の薬局数は5万8000軒に上るが、3万軒に減らす論議もあった。例えそうなったとしても京都府内の薬局の殆どが残ってほしい」と断言。
 その上で、「京都府薬では、どのような機能を果たす薬局が国民のためになり、薬局の生き残りに繋がるかをできるだけ分かりやすく示してアシストしたい」 と抱負を述べた。

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