オンライン服薬指導の展望とポイント 森下竜一氏(規制改革推進会議委員)に聞く

 2018年度の診療報酬で、オンライン診療管理料(100点)、オンライン診療料(70点)が新設され、「3カ月に1回面談で診療」、「緊急時に医師がおおよそ30分以内で行ける距離」、などの条件の下、オンライン診療がスタートした。オンライン服薬指導についても、オンライン診療と一気通貫で行える形での検討が進められている。そこで、森下竜一氏(規制改革推進会議委員・大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学寄附講座教授)に、オンライン服薬 指導の展望とポイントを聞いた。
 オンライン服薬指導には、「特区での議論」と、「全国一律の解禁」をベー スにした2つの流れがある。前者は、いわゆる遠隔地に関するもので、近くに 薬局が無いケースを想定している。その事例の一つとして、東京から無薬局地 域に薬剤を送った場合の服薬指導のあり方などが検討されている。
 規制改革推進会議での議論の対象は後者で、地方での国家戦略特区の議論とは別に、「より良い医療を提供するためのオンライン医療のあり方」の一環と して全国一律での解禁を目的に検討を重ねてきた。
 オンライン医療は保険点数も付いて既にスタートしているが、治療薬が必要 な場合は薬局へ行かなければならないため、オンライン活用の下に一貫した医 療が実施できていないのが現状だ。
 オンライン医療については、初回から6か月間は同一の医師が行い、3カ月に 1回の対面診療が義務付けられている。さらに、緊急時に概ね30分以内で医師 が対応できることも条件の一つになっている。
 対象疾患は、高血圧や糖尿病の生活習慣病や、難病、てんかん、小児特定疾 患など。オンライン診療によるセカンドオピニオンも検討されている。
 現在、オンライン医療をの活用が少ない現状について森下氏は、「初回から 6か月間同一医師が行う点が影響している」と分析し、「規制改革推進会議で は、今、同一医師を同一医療機関に改定することで議論している」と話す。
 さらに、「D(ドクター) to P(患者)with N(ナース)」、すなわち医 師がオンライン医療をしている時、在宅患者の傍らに看護師がいる場合に何が できるかの論議も行われている。
 看護師ができる具体的内容としては、点滴注射、尿検査、血液検査などが挙げられる。また、オンライン医療に対する医師の研修必修化も検討されてお り、「D to with P(薬剤師)」に関する今後の議論展開も予測される。
 

 オンライン服薬指導
実施するための薬機法改正後1年以内にスタート

 一方、全国的に解禁するオンライン服薬指導は、「住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使うことができるようにするための薬剤師・薬局の在り方の見直し」の一環として「薬局機能別の知事の認定制度」、「薬剤師の新しい義 務の法制化」、「電子処方箋の完全電子化」とともに議論されている。
 オンライン医療は、「かかりつけ医師を作る」、「おおよそ30分以内で駆け つけられる」、3カ月に一度は対面医療を行う」などを条件にスタートして いるが、オンライン服薬指導もこのルールの活用が見込まれている。
 具体的には、「かかりつけ薬剤師を作る」、「ある程度の時間内できちんと 対面での服薬指導できる薬局」、「3カ月に1回は対面での服薬指導を行う」などが具体的なオンライン服薬指導の条件になるものと予測される。
 オンライン医療で義務付けられている「初回から6か月間“同一医師”で対 応」については、「同一医師」の部分を「同一薬剤師」ではなく当初から「同 一薬局」とする見込だ。
 このように、規制改革推進会議では、東京から地方にオンライン服薬指導す るのではなく、あくまでも通常の医療の中で服薬指導もオンライン化し、患者 や在宅医療の利便性を向上させる観点から論議を展開しており、厚労省でルー ル作りをしているのが現状だ。
 森下氏は、「薬局薬剤師が、在宅での服薬指導などの業務で全て出かける必 要があるならば地域での負担が大きくなる。それにより薬局を閉めなければな らないケースも出てくるので、オンライン服薬指導は薬剤師にとってもメリッ トを生む」と強調する。
 ところで、オンライン服薬指導の実施には、薬機法を改正が不可欠となる。「対面義務の例外として一定ルールの下でテレビ電話等による服薬指導規定」 を定める必要があるためだ。オンライン服薬指導は、実施するための薬機法改 正後1年以内にスタートする。
 今回の規制改革推進会議のもう一つの目玉に、「データポータビリティ」がある。健診データを個人に戻すことを可能にするシステムで、中性脂肪が少し高いなどのメタボ特定検診の結果に関しては民間で健康管理するサービスが可能になる。正に健康サポート薬局にうってつけのシステムだ。
 さらに、「データポータビリティ」は、お薬手帳とのリンクする可能性が高い。薬局・ドラッグチェーンを中心に、個人の医療情報をもとにした薬剤管理や服薬指導が可能になるからだ。このような「データポータビリティ」を活用した薬局業務は、ここ5年、10年の間に急速に普及するものと予測される。
 「データポータビリティ」の仕組みに関しては、米国では「ブルーボタン」というアプリがあり、それを用いると自分の個人データを全て引っ張り出せるようになっている。
 森下氏は、「日本でもブルーボタンのようなシステムの整備が望ましい」と明言する。さらに、「米国は、皆保険が無いので個別のデータが存在しないが、日本はデータが既に存在する」と指摘し、「米国のような民間のシステムを国が実施するのは難しい。規制改革推進会議では検診機関でのデータを本人同意のもとにデータ管理会社に移行できる仕組み作りを検討している」と明かす。
 その仕組み作りに、法律的な判断を明確にする必要があるのは言うまでもない。6月6日には、「基本的に必要なデータをどのようにして抜き取れるか」、「どういった契約内容であれば実施できるか」など、「データポータビリティ」を実施するためのガイドラインが公表された。
 最後に森下氏は、「オンライン服薬指導、薬局機能別の知事の認定制度、薬剤師の新しい義務の法制化などが推進される中、薬局・薬剤師の地域医療での役割がさらに大きくなる」と断言。
 その上で、「オンライン医療がスタートして、医師はより密接に地域医療に取り組めるようになった。薬局・薬剤師には、患者の利便性を重視しながらの健康管理全体に対する役割がさらに求められるようになる」と訴えかける。
     

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