大阪府薬剤師会は18日、近畿大学東大阪キャンパスで「薬剤師のための予防接種に係る研修会」を開催した。日本薬剤師会が作成した「新型コロナワクチン接種のための研修プログラム」に基づき、終了証書を発行するワクチン接種研修会は、全国で初めて。
講義を受けてポストテストに合格し、実技研修を終えた58名の薬剤師全員に修了証書が手渡された。
研修会のあいさつの中で、乾英夫大阪府薬会長は、「今年の4~5月に、薬剤師が新型コロナワクチンの打ち手として期待されたが、応えられなかった」と指摘。
その上で、「今後、ワクチンの打ち手が不足した時には、しっかりと予防接種研修会の修了証書を持った薬剤師が接種に関われるようこの研修会を企画した」と説明し、「近畿大学の多大なご協力で、この研修会が開催できた。岩城薬学部長、メディカルサポートセンターの医師、看護師の皆さんに感謝申し上げたい」と述べた。
続いて岩城正宏近大薬学部長が、「ワクチンの打ち手として薬剤師の名が挙がったが、制度上などの問題で見送られた。その時、薬学教育を行う立場として、緊急時に薬剤師がワクチンの打ち手に成れるように備えておくことの重要性を痛感した」と強調。
さらに、「近大医学部の協力を得られる確認ができたので、薬剤師の職能拡大に貢献するため、大阪府薬に研修会開催を申し入れた。こうした研修会が全国に広まり、国民に薬剤師の姿が見える状況に改善されていくことを望みたい」と訴えかけた。
渡嘉敷奈緒美前衆議院議員は、「新型コロナワクチンは、ずっと打ち続ける必要がある。その時、地域の掛かり付け医師だけでなく、掛かり付け薬局の利用が有効な一手になることを厚労省に申し入れていた」と報告。
「世界で早くコロナワクチンの接種が進んでいるのは、薬剤師が頑張っている国である」との認識を示した上で、「薬剤師が先にワクチン接種スキルを身に付け、緊急事態に打ち手となった後に、法整備していく方法が望ましい。‟予防は薬剤師が行う”環境を作っていきたい。今回、選挙に落選したが、今も厚労省と連絡を取っている」と訴求した。
研修会では、「新型コロナワクチンの基礎知識」、「緊急時対応の基礎」、「新型コロナワクチンのより安全な新しい筋注の方法」などの動画講義を行った後、ポストテストが実施され、全員合格した。
実技研修では、近畿大学メディカルサポートセンターセンターの長代理の藤本美香准教授(医学博士)が「ワクチン接種の全体の流れ」、「ワクチン接種における安全配慮」、「筋肉内注射の実際」について講演。
その後、同センター看護師らが「シミュレーターを用いた実技」指導を行った。
筋肉注射は、「三角筋の中央部への注射」がポイントで、①必ず肩峰を抑えて穿刺部位の確認、②穿刺部位の消毒、③穿刺の順で実施する。「筋肉内に針を刺し、薬液を注入する」ことが重要だ。
また、穿刺では、効き手でシリンジを持ち、注射部位周辺の皮膚を軽く広げるように伸展させてから三角筋の外縁に手を添える。注射針を皮膚に約90度の角度で素早く刺す。シリンジの持ち方には決まりが無く、支持し易い持ち方で接種する。
ワクチン接種前には、「名前」、「アレルギーの有無」、「利き手」、「注射内の薬液の重点」の確認も忘れてはならない。