武田薬品は30日、Frazier社と武田薬品のノロウイルスワクチンの開発・販売を行うバイオ医薬品企業 HilleVax社設立を目的とした提携契約を締結したと発表した。
武田薬品は、契約一時対価ならびに将来の売上に応じたキャッシュ・ロイヤルティおよびマイルストンを対価として、HilleVax 社へノロウイルスワクチン候補である HIL-214(旧開発コード:TAK-214)の日本を除く世界における独占的開発および販売の権利を譲渡した。
武田薬品は日本における販売権を保有し、HilleVax 社は日本における開発活動をグローバル開発に統合する。
武田薬品は、引き続きワクチン事業に注力し、同提携により現在日本で供給しているワクチンに加え、デング熱、新型コロナウイルス感染症、新型インフルエンザおよびジカウイルスに対して重点的に取り組むことが可能になる。
ウイルス様粒子技術(VLP)を用いたワクチン候補である HIL-214 は、4712 例の成人被験者を対象とした無作為割付プラセボ対照P2後期有効性フィールド試験を完了している。
同試験では、HIL-214 の良好な忍容性およびノロウイルス感染に起因する中等度から重度の急性胃腸炎に対する予防効果のプルーフ・オブ・コンセプト(proof of concept)が確認された。
同ワクチンについては、これまでに9つの臨床試験が実施されており、4500 例以上の被験者の安全性データおよび 2000例以上の被験者から得られた免疫原性データが集積されている。
ノロウイルスは、下痢、嘔吐、腹痛、吐き気を特徴とし、時に発熱や、重篤な場合は脱水症状を引き起こす場合もある腸管感染症で、あらゆる年代で急性胃腸炎を引き起こす主たる原因として知られている。
ノロウイルス関連疾患は世界中で年間約7億人が発症し、年間20万人以上がノロウイルス感染を原因として亡くなっていると推測され、大きな経済的および社会的負担となっている。 現在、ノロウイルス感染症で承認されているワクチンはなく、HIL-214は臨床試験で最も開発が進んでいるノロウイルスワクチンである。
◆ラジーヴ・ヴェンカヤ武田薬品グローバル ワクチン ビジネス ユニット プレジデントのコメント
武田薬品とFrazier社には優れた提携実績があり、HilleVax社の設立によって世界で最も開発が進む HIL-214がさらに進捗し、ノロウイルスによる急性胃腸炎の甚大な世界的負担の軽減に貢献することを確信している。
また、本提携により、武田薬品は世界各国で承認申請を開始しているデング熱ワクチン、パンデミックプログラムおよび米国政府との提携によるジカウイルスワクチンの開発に重点的に取り組むことが可能になる。
◆HilleVax社共同設立者でFrazier社ベンチャーパートナーの山田忠孝氏のコメント
Phathom Pharmaceuticals 社設立における良好な提携関係に続き、HilleVax社設立においても武田薬品と再び提携できることを非常に嬉しく思っている。
ノロウイルスは、高い罹患率と死亡率のみならず、世界中で甚大な経済的および社会的な損失をもたらす。HIL-214は、この甚大な損失に対処しうる重要な機会を与えてくれるものと信じている。