ユーカリ油の表皮バリア機能亢進作用を解明 ロート製薬

表皮保湿因子発現と皮膚バリア関連因子産生促進新技術として期待

 ロート製薬は2日、ユーカリ油に表皮バリア機能に関わる因子の遺伝子発現亢進並びにタンパク質産生を促進する作用を発見したと発表した。同研究成果により、今後、皮膚バリア機能破綻を伴う皮膚症状に対するユーカリ油の応用が期待される。
 ロート製薬では、「Connect fot Well-being」実現に向けた挑戦のひとつとして皮膚疾患研究に取り組んでいる。今回、研究拠点ロートリサーチビレッジ京都でユーカリ油に関する機能性研究を進めた結果、表皮角化細胞(ケラチノサイト)の天然保湿因子であるフィラグリンの遺伝子発現と、タイトジャンクション構成因子のオクルーディン遺伝子発現並びにクローディン-1のタンパク質産生に寄与することを明らかにした。
 ユーカリ油は、ユーカリの葉から抽出された油で、これまでに消炎、解熱、鎮痛、殺菌作用などを持つことが知られており、外皮用薬に広く使用されています。しかしながら、炎症性皮膚疾患の治療に広く使われてきた実績があるものの、詳細な作用機序に関する知見は少ないのが現状だ。

図1 皮膚バリア機能に関与する因子


 今回の研究では、皮膚炎治療の重要なターゲットの一つである皮膚バリア機能に関与する因子に着目し、ケラチノサイトを用いてユーカリ油の作用機序の解明を試みた(図1)結果、次の①、②の事象が確認された。

 ①ユーカリ油は、ケラチノサイトのフィラグリン、オクルーディン遺伝子の発現を亢進させる(図2)。

 ケラチノサイトを用いた試験で、角層の保湿に関わるフィラグリン(FLG)の遺伝子発現を濃度依存的に亢進させる作用を見出した。
 また、皮膚バリア機能に寄与するタイトジャンクション構成因子の一つのオクルーディン(OCLN)の遺伝子発現を濃度依存的に亢進させる作用を見出した。

 

図2 ケラチノサイトに於ける FLG、OCLN 遺伝子発現亢進作用
ケラチノサイトにユーカリ油を添加し、24 時間後の遺伝子発現をリアルタイム PCR 法にて解析した。
(n=3, * : P < 0.05, ** : P < 0.01, vs control, Dunnett’s test)

 ②ユーカリ油はタイトジャンクション関連因子クローディン-1 のタンパク質産生量を亢進させる(図3)
 ケラチノサイトを用いた試験で、タイトジャンクションの構成因子の1つであるクローディン-1(CLDN1)のタンパク質産生を濃度依存的に亢進させる作用を見出した。

図3 ケラチノサイトに於ける CLDN1 タンパク質産生量変化
ケラチノサイトに塩化カルシウム(CaCl2)並びにユーカリ油を添加し、120 時間の培養後、免疫染色法を用いてCLDN1 タンパク質局在並びに産生量を解析した。
上図:CLDN1 の免疫染色像、(緑:CLDN1 タンパク質、Bar = 200μm)下図:染色の平均総ピクセル輝度を縦軸としたグラフ(n=3, ** : P < 0.01, vs CaCl2 0.25 mM, Dunnett’s test)


 ケラチノサイトを用いた試験により、ユーカリ油は天然保湿因子であるフィラグリンの遺伝子発現とタイトジャンクション構成因子のオクルーディンの遺伝子発現並びにクローディン-1 のタンパク質産生に寄与することが明らかになった。
 同研究成果より、ユーカリ油の従来から知られている消炎、解熱、鎮痛、殺菌作用以外にも皮膚バリア機能の亢進に寄与する可能性が示唆された。

 ロート製薬では、今後も、皮膚の恒常性維持に関わる成分の研究活動を通じて、顧客の QOL 向上に貢献していく。
 

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