コロナ禍2年目の熱中症リスク回避のポイントは“筋肉”   教えて!「かくれ脱水」委員会

富和 氏

 教えて!「かくれ脱水」委員会は、コロナ禍2年目を迎えて同委員会の富和清訓氏が解説する「マスク熱中症だけじゃない熱中症リスク回避のポイント」を発表した。
 新型コロナウイルス感染症対策のため長く続く自粛生活は、高齢者だけでなく、中年層にまでアクティビティの低下を強いる結果となっている。アクティビティの低下は筋肉の質と量の低下につながる。
 筋肉の量が少なくなれば、体内の水分貯蔵量に影響を来し、脱水症・熱中症のリスクを増やし兼ねない。コロナ禍以前にアクティブに行動していた人こそ、より大きなリスクがある。話題のロコモティブシンドロームにも関係し、今我々が直面している「脱水・熱中症リスクと、その予防法」を、教えて!かくれ脱水委員会の富和氏が次のように解説する。

 身体の水分を貯蔵する臓器、筋肉自粛期間でのアクティビティの低下は、筋力や筋肉量の低下に大きな影響を来すと考えられる。実は、筋肉組織は身体の水分貯蔵庫でもあり、全身の水分のうち筋肉組織に実に43.4%の水分を貯蔵している。
 筋肉組織の76%は水分である一方で、脂肪組織では15%であり、いかに筋肉組織が水分の貯蔵庫になっているかが分かる。
 筋肉組織と脱水には密接な関係がある。脱水状態になると、血管内の水分は減少しそれを補うため、細胞内から水分が血管内に移動するよう促す。だが、筋肉量の減少は、全身の水分の予備備蓄量が低下していることになるので、脱水症への進行が早まり、重篤化につながる恐れもある。

筋力低下で血流の循環障害を惹起し、全身の冷却機能にも弊害が

 筋肉が痩せてしまうと水分貯蔵量が少なくなるだけでなく、静脈を通じて心臓に戻る血液の勢い(筋ポンプ作用)が弱くなり、特に脚のむくみの原因になり、末梢の循環機能の低下を招く。
 その結果、冷却(放熱)の効率が低下して、熱中症リスクを上げてしまう。脚がむくみやすい人は、脱水症・熱中症になるリスクが上昇している状態と考えられる。
 昨今の自粛期間のように、活動自体が少ない期間が長いと、筋力の低下は知らず知らずに進むことになる。この一年、ほとんど運動をせず体重が増えている人は、水分の貯蔵庫である筋肉の量が減って、水分をあまり含まない脂肪が増えた状態になっているかもしれない。
 日常のアクティビティが低下しているのに体重が変わらない人は、筋肉量が減少した一方で脂肪が増えた可能性がある。実は、海外では巣籠による体重増加を意味するQuarantine15(クアランティーン:防疫隔離)という新種のパンデミックが起こっているとの報告がある。
 これは、大学に入った新入生の体重が15ポンド(約6.8g)増えるという Freshman15(Freshman(フレッシマン):新入生)のパロディだ。
 巣籠で運動しなければ、脂肪が増えて体重増加というのは容易に想像できる。自粛以前の身体と比較すれば、格段に脱水症・熱中症になりやすくなってしまっている可能性もある。

ロコモティブシンドロームを避けて、早め・強めのエクササイズで暑熱馴化を!

 高齢者の割合がさらに上昇しつつある昨今、要支援、要介護になる原因の第1位は、運動器(身体運動に関わる骨、筋肉、関節、神経など)の機能低下だ。
 コロナ禍の一年間にアクティビティの制限をしてきた結果として、ロコモティブシンドローム(ロコモ)=運動器症候群(運動器の障害による移動機能の低下した状態)のリスクが増大していることも危惧される。

 暖かくなり、 コロナ禍 も少し落ち着きを見せる頃、いざ動き出そうとした時、ガクンと運動機能の低下に気づくかもしれない。アクティビティの低下した状態だからこそ、今年は春先、早めの暑熱馴化をする必要がある。
 また、暑熱馴化のためのアクションは、運動器の機能低下の予防にも役立つはずだ。
 暑熱馴化とは、日本の夏のような高温多湿の環境で、体温調節を行う機能である汗を上手にかける身体に馴らしておく準備を意味する。身体に熱がこもることから起こる熱中症を防ぐために、春のうちに是非取り組んでおこう。

◆暑熱馴化のポイントは、次の通り。
・やや暑い環境
・1日30分
・ややきつい運動を2週間程度行う

 暑熱馴化をするには、暑くなる前に、「やや暑い環境」で、「ややきつい」運動をおこなうことだ。1日39分を2週間程度行うと、身体が暑さに慣れてくると言われている。
(参照:環境省 熱中症環境保健マニュアル2018)

春先から脱水やロコモから身体を守る基本、「3・3・30」を習慣に

 その暑熱馴化のために、今年は少し早めの春の時期に、筋力をアップさせることを意識したエクササイズを行うことを薦めたい。運動の強度は、18歳から64歳の大人で、3METs(メッツ)以上、息が弾み汗をかく程度の運動が目安。
 METs(メッツ)とは、運動強度の単位で、安静時(横になったり座って楽にしている状態)を1として、その何倍のエネルギーを消費するか示した活動強度の指標である。
 おススメは「ラジオ体操」。誰でもすぐに始められるラジオ体操は、しっかりやればかなりの運動になる。ちなみに第一は、4.0メッツ、第二が4.5メッツとされている。天気の良い日は、屋外で行うと日差しを浴びることで、より暑熱馴化に役立つと考えられる。
 また、ロコモティブシンドロームの予防としても、強度3メッツ以上の運動を30分間、週に2回程度行う運動習慣が推奨されている。週に2回というのを思い出しやすく「3日に1回」とすれば、『3メッツ、3日、30分』と3が3つ並ぶ。まさに、脱水予防のための運動の『サンミツ』だ。
 是非、この運動のサンミツ:「3メッツ、3日に1回、30分」を習慣にして頂きたい。
 運動後は筋肉を作るタンパク質を。脱水(かくれ脱水)に気づかぬままで運動しないよう注意する。運動で頑張った分は栄養補給も大切で、特に筋肉の源になるたんぱく質を多く含んだ食べ物をその後の食事や補給で摂取するよう心掛けよう。
 もちろん、汗をかくので運動前後の水分補給もお忘れなく。きちんと食事を3食摂り、運動後には水分補給を。大量の汗をかいた時は、経口補水液がお薦めだ。

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