新型コロナ流行と変異株の早期検知・大量検査のインフラ構築に期待
塩野義製薬は19日、北海道大学、ロボティック・バイオロジー・インスティテュート(RBI)、iLACとの4者間で、同日、下水中の新型コロナウイルスをモニタリングするための自動解析体制の構築に向けた基本合意書を締結したと発表した。
同事業は、下水疫学に基づきウイルス感染症流行及び変異株の侵入・発生動向を早期に検知し、大量検査の実施が可能な自動解析体制を構築するというもの。 本年4月以降に分析業務を開始する。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、腸管上皮細胞に感染して増殖すると示唆されており、胃腸炎症状を呈さない感染者の糞便中からも高い割合で検出されている。新型コロナウイルス感染者の糞便中に排出されたウイルスは、下水処理場に集積するため、下水中のウイルスの定期的なモニタリングにより集団レベルの疫学情報を取得する「下水疫学調査」の研究が世界中で加速している。
新型コロナ感染症の流行状況の早期検知や収束判断、感染・増殖能の高い変異株の侵入・発生動向確認に極めて有用な情報となることが論文等でも報告されている。
日本においては、米国や欧州の一部の国・地域と比較して人口当たりの新型コロナ感染者数が少なく下水中SARS-CoV-2濃度が低い。従って、より高感度なウイルス検出法の実現に向けて、北海道大学及び塩野義製薬は昨年10月に共同研究契約を締結し研究を推進し、下水からの高感度ウイルス検出法を開発した。
また、下水疫学調査の社会実装にあたっては、採取した下水をハイスループットで解析する体制の構築が急務で、国産汎用ヒト型ロボットLabDroid「まほろ」によりSARS-CoV-2 RNAの検出・定量及び次世代シークエンス(NGS)解析の前処理(ライブラリ調製)を自動化する技術を持つRBI、大規模NGS解析によりゲノム情報(ウイルス変異状況等)の把握を可能にするiLACを加えた体制を構築し、社会実装に向けて4者間で基本合意書を締結した。