
FRONTEOは7日、小胞体ストレス研究所(本社:徳島市)が開発を進める糖尿病治療薬候補低分子化合物「ERS」について、治療効果が期待される患者の層別化に活用するバイオマーカー探索プロジェクトを開始したと発表した。
同プロジェクトでは、小胞体ストレス研究所が培ってきた小胞体ストレス応答に関する研究知見と、FRONTEOのAI創薬支援サービス「Drug Discovery AI Factory(DDAIF)」の解析技術を組み合わせ、小胞体ストレス研究所が開発を進めるERSについて、治療効果が期待される患者群の特定に資するバイオマーカー候補の探索と仮説生成を行う。加えて、小胞体ストレス応答とAIを組み合わせた新たな創薬アプローチの可能性を追求していく。
一般に患者層別化バイオマーカーを得ることの重要性は高く、臨床開発において有効性を示せる確度の向上や必要症例数の削減、患者選定・募集の効率化等に貢献し、製品化後も投与対象者の選択や効果が乏しい治療を回避することにつながる。
同プロジェクトは、FRONTEOが本年2月より展開している「DDAIF Innovation Bridge」(DDAIFによる技術支援と出資を組み合わせた取り組み)として実施され、同件の契約締結に合わせ、FRONTEOは小胞体ストレス研究所への出資を行うもの。
小胞体は、細胞内で合成されたタンパク質の折り畳みや品質管理を担う細胞小器官である。タンパク質は、アミノ酸がつながった鎖が特定の立体構造に折り畳まれることで、それぞれの機能を発揮する。タンパク質が正常に折り畳まれず小胞体内に蓄積すると「小胞体ストレス」が生じ、細胞はこれを解消するため「小胞体ストレス応答」を起こす。
小胞体ストレス応答によって正常なタンパク質の折り畳みが回復すれば細胞の恒常性が維持される一方、ストレスが過剰あるいは長期化すると、細胞機能の低下や細胞死につながり、さまざまな疾患の発症に関与すると考えられている。このため、小胞体ストレス応答のメカニズムを活用した創薬は、新たな治療法の開発につながる研究領域として注目を集めている。
小胞体ストレス研究所は、親泊政一徳島大学先端酵素学研究所生体機能学分野教授が、世界に先駆けて見いだした小胞体ストレスと糖尿病の関連をはじめとする研究成果の実用化を目指し、2017年に設立したバイオベンチャーだ。
親泊氏および同社の研究開発は、日本医療研究開発機構(AMED)、科学技術振興機構(JST)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などの公的プログラムに多数採択されており、経済産業省「J-Startup WEST」、徳島県「新時代イノベーション創出支援」などの支援も受けている。
小胞体ストレス応答の先駆的研究者であり、アルバート・ラスカー基礎医学研究賞や生命科学ブレイクスルー賞をはじめとする多数の権威ある賞の受賞歴を有する森和俊名城大学薬学部教授および京都大学高等研究院特別名誉教授が、同社の科学顧問を務めている。
◆親泊政一小胞体ストレス研究所 代表取締役社長のコメント
ERSは、β細胞に回復の余地が残る糖尿病患者さんにこそ真価を発揮する全く新しいコンセプトの薬剤であり、そうした患者さんを見極めるバイオマーカーの獲得は、臨床開発の成否を左右する鍵となる。
DDAIFは、「KIBIT」によって膨大な文献情報から人の目では捉えきれない分子間の関係性を見いだし、創薬研究者がその根拠を紐解き、検証の道筋を示す点を高く評価している。
当社が長年培ってきた小胞体ストレス研究の知見とFRONTEOのAI技術を掛け合わせることでERSの開発を加速させ、小胞体ストレスが関わる多様な疾患での協業にもつなげ、画期的な治療選択肢を一日も早く患者さんにお届けしたい。
◆豊柴博義FRONTEO 取締役/CSO(Chief Science Officer)のコメント
小胞体ストレス応答は、細胞の恒常性を維持する重要な仕組みであり、さまざまな疾患との関わりが研究されている非常に注目度の高い領域である。ユニークな切り口から疾患にアプローチする小胞体ストレス研究所の技術には大きな可能性を感じている。
今回の取り組みを通じて、DDAIFを活用し疾患のメカニズムを捉える鍵となる小胞体ストレスに関する研究開発を進展させることができれば、ERSの価値向上、さらには両社の技術的シナジーを通じ多様な疾患への展開も視野に入る。幅広い応用可能性を持ち、将来的に多くの患者に新たな治療選択肢を届け得る創薬プラットフォームを有する小胞体ストレス研究所と協業できることを大変嬉しく思う。
