ノボ ノルディスクは8日、ギリシャ・アテネで開催された第94 回欧州動脈硬化学会(EAS)において発表したリアルワールドエビデンス研究「POSEIDON」(18カ国・1万8904 例)の最新結果を公表した。
同研究では、ガイドラインに基づく標準治療下においても心血管疾患患者で心血管炎症の高い有病率が確認された。
また、European Journal of Heart Failure に掲載されたPOSEIDON研究の別解析では、心不全患者においても約5人に2人に心血管炎症が認められることが示された。
POSEIDON 研究では、心血管炎症は高感度C反応性タンパク(hsCRP)値2 mg/L以上として定義した。hsCRPは、心血管炎症を評価する上で最も一般的に使われ、広く利用できる血液バイオマーカーである。
このリアルワールドエビデンス結果は、現在の心血管ケアにおける重要なギャップを示唆している。ガイドラインで推奨される治療に基づき、コレステロール、血圧、血糖などの従来のリスク因子を管理している場合でも、心血管炎症が原因となる心血管リスクが残存していることが示された。
POSEIDON研究は、この高リスク集団における心血管炎症の有病率を評価した大規模グローバル研究の一つで、2023年から2025年にかけて、欧州、北米、南米、アジア太平洋地域の18カ国で1万8904例が登録された。
このうち1万3475例がASCVDを有し、その42.7%(5,757例)がCKDを併存していた。
また、1万1809例が心不全患者であり、すべてのタイプの心不全(左室駆出率保持型、軽度低下型、低下型)が含まれている。心血管炎症は、ASCVDの発症および進展において重要な役割を果たす。
複数の研究において、心血管炎症を有する患者では、心筋梗塞、脳卒中、心血管死といった主要心血管イベントのリスクが増加することが示されている。
炎症はCKDの進行にも寄与し、CKDが炎症を促進することで、心血管リスクが増幅される可能性が示唆されている。
さらに、心血管炎症は心不全においても重要な役割を果たし、これはすべてのタイプの心不全に共通して認められ、肥満や腎疾患などの代謝性疾患患者において特に多く認められる。
近年、心血管疾患における炎症の重要性が認識されており、欧州心臓病学会(ESC)、米国心臓協会(AHA)、米国心臓病学会(ACC)のガイドラインでは、積極的な予防介入の指針として、hsCRPの上昇がリスク評価のバイオマーカーとして位置付けられている。
◆Filip Knopノボ ノルディスク上級副社長兼チーフメディカルオフィサーのコメント
POSEIDON研究は、標準治療を受けているにもかかわらず、ASCVDおよびCKD、または心不全患者において、心血管炎症が持続的なリスクの重要な要因となっていることを示す重要なエビデンスを提供している。
心血管炎症によるリスクの実態を理解することは、この重要なアンメットニーズに対応する革新的な治療法の開発に向けて不可欠である。
◆Carolyn S. P. Lamシンガポール国立心臓センター心臓内科シニアコンサルタント(Duke-NUS医科大学 心血管・代謝疾患シグネチャーリサーチプログラム教授) のコメント
本研究は、炎症が周辺的な問題ではなく、現在利用可能な最善の治療にもかかわらず依然としてリスクが残存する何百万人もの心血管疾患患者に影響を及ぼす、共通のリスク要因であることを明確に示している。
特に注目すべき点は、多様な患者集団においても一貫した炎症シグナルが認められ、炎症を直接標的とする治療から最も恩恵を受ける可能性が高い患者を特定するという実践的な道筋を示唆している。
これは残余心血管リスクの捉え方を再定義するものであり、同時に、実際のアンメットメディカルニーズに対応する新たな抗炎症療法の可能性を強調している。

