ASGCT 29th Annual Meetingで新しい遺伝子治療技術「JUST-AAV」の前臨床における安全性・有効性データ発表 JCRファーマ

 JCRファーマは、11日~15日まで米国のマサチューセッツ州ボストンで開催されたASGCT 29th Annual Meetingにおいて、同社が独自に開発したアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いた新しい遺伝子治療技術「JUST-AAV」を含むプラットフォーム技術に関する前臨床研究データを発表した。
 また、同社パートナーの一社であるアレクシオン・アストラゼネカ・レアディジーズが、JUST-AAV 技術を活用した提携プログラムの一つに関する前臨床データを報告した。
 JUST-AAVは、標的組織への送達性を高め、肝臓への集積性を低減させ安全性を高めた同社独自の新しい遺伝子治療技術だ。同技術により、AAVを用いた遺伝子導入技術の安全性・有効性の向上を目指している。
 JUST-AAVは、肝臓回避型、筋肉指向型、脳指向型など、複数の種類を含み、AAVによる遺伝子治療をさらに発展させる可能性を有している。発表内容は、次の通り。

◆東京慈恵会医科大学医学部による発表
 Development of an AAV-Based Gene Therapy for GM1 Gangliosidosis Using a Transferrin Receptor Antibody–Fused Enzyme with Markedly Enhanced Therapeutic
Efficacy (Presentation Number: 391)
 Presenter: Saki Matsushima, Ph.D. (The Jikei University School of Medicine, Division of Gene Therapy, Research Center for Medical Sciences, Tokyo, Japan)

 GM1ガングリオシドーシスを対象として、末梢臓器においてJ-Brain Cargo融合酵素を発現させ、CNSを治療するAAV遺伝子治療プログラムに関する前臨床データを報告した。同研究では、まずマウスのトランスフェリン受容体(TfR)を標的とするJBrain Cargoを用い、GM1ガングリオシドーシスマウスモデルに対し治療を行ったところ、脳内のGM1ガングリオシド蓄積が大幅に低減し、神経学的機能の改善および生存期間の有意な延長が認められ、治療コンセプトが実証された。
 続いて、臨床応用を見据え、TfR結合ドメインを抗ヒトTfR抗体に置き換えた治療用ベクターを、ヒトTfRを発現するGM1ガングリオシドーシスマウスモデルを用いて評価を行った。
 AAVベクターを静脈内投与した結果、肝臓で高い遺伝子発現が認められ、抗ヒトTfR抗体融合酵素が血中で高濃度に検出された。これにより、末梢組織およびCNSへの効率的な分布が可能となる。
 さらに、ヒトTfR抗体融合酵素は、生体内分布、CNSへの移行性、ならびに治療効果において同様の結果を示した。なお、肝臓での遺伝子発現や全身への酵素曝露に関連した明らかな毒性は認められなかった。
 これらの結果から、TfRを標的とし血液脳関門(BBB)を通過可能なリソソーム酵素を発現するAAV遺伝子治療が、GM1ガングリオシドーシスにおいてCNSの病態を強力に改善できることが示された。

◆Long-Term Efficacy and Neuroprotection by Systemically Administered, CNS-Targeting AAV Capsids in Mouse Models of Neuronal Ceroid Lipofuscinosis (CLN1 and CLN2) (Poster Number: 3460)
 Lead Author: Tomoki Hirashima (JCR Pharmaceuticals)

 神経セロイドリポフスチン症(CLN1 および CLN2)のマウスモデルを用いて、JUST‑AAV を用いた遺伝子補充療法の長期的な有効性について、遺伝子組換え酵素補充療法および従来型AAVとの比較結果を報告した。
 CLN1(PPT1欠損)モデルでは、生存、運動機能、認知機能、神経病理、網膜構造の5つの評価項目について検討した。遺伝子組換え PPT1 投与群では、疾患コントロール群と同様に生後31~41週で全例が死亡し、生存期間の延長は認められなかった。
 一方、従来型AAV9-PPT1治療群では、生存期間が53~65週まで延長された。これに対し、JUST‑AAV‑PPT1投与群では、健常マウスとほぼ同等の寿命が認められた。 また、基質蓄積および炎症の指標である SCMAS、CD68 および GFAP 陽性領域は、JUST‑AAV‑PPT1 投与群で減少し、神経炎症およびミクログリア活性化の抑制が示された。脳組織解析では、JUST‑AAV投与マウスにおいて PPT1酵素活性の上昇が確認された。
 さらに、JUST‑AAV‑PPT1投与群は、54週時点での運動機能の保持は健常マウスと同等であった。網膜神経節細胞層の厚さについては、疾患群で有意な減少がみられたのに対し、JUST‑AAV‑PPT1投与群では網膜構造が保持されていた。
 CLN2(TPP1 欠損)モデルでは、 JUST‑AAV‑TPP1 を全身投与した結果、顕著な治療効果が認められた。剖検解析により、JUST‑AAV‑TPP1投与群は、脳組織中のTPP1活性の上昇が確認され、CNSへの効率的な送達と持続的な治療効果が示された。 
 JUST‑AAVを用いた遺伝子治療が、CLN1およびCLN2マウスモデルにおいて生存期間を有意に延長し、病態変化を改善したと結論づけている。同試験結果により、JUST‑AAV技術は、ライソゾーム病やその他のCNS疾患に対する、次世代の遺伝子治療につながる可能性が示された。

◆アレクシオン・アストラゼネカ・レアディジーズの発表。
AAV Capsid Presenting a Miniaturized Anti–Transferrin Receptor Antibody Enables Broad CNS, Liver-detargeted Biodistribution (Presentation Number: 427)

 JUST-AAV カプシドに関する前臨床データを報告しました。本カプシドは、小型化した抗TfR結合因子を発現し、さらに肝臓への集積を抑制する設計となっている。
 マウスモデルおよび非ヒト霊長類に単回静脈内投与をした結果、CNS全体への広範な分布と高い遺伝子導入効率が確認された。また、従来のAAV9と比較して、脳と肝臓の曝露比が大幅に改善され、用量依存的な遺伝子発現が示された。これらの結果から、JUST-AAVは肝臓への影響を抑えながら、CNSへ効率的に遺伝子を送達できる遺伝子治療プラットフォームであることが示された。
 なお、同データは前臨床試験に基づくものであり、研究の限界に関しては考察されていない。

◆薗田 啓之JCRファーマ代表取締役社長のコメント
 今回の研究成果は、これまで治療が困難であった疾患に対する新たな治療法の可能性を開くものだ。前臨床試験において、当社の新技術である脳指向型 JUST-AAV は従来のAAV9 と比較して効率良く薬剤を中枢神経系(CNS)へ送達できることを示した。また、肝臓への指向性を著しく減少させることで、ヒトでの使用におけるAAVの安全性向上が期待できる。

 これらのデータは、これまで治療が困難とされてきたCNS疾患に対する新たな治療選択の創出に向けた、重要な前進を示すものである。当社は、アンメット・メディカル・ニーズに対応する革新的なソリューションの開発に尽力しており、今回の研究はその重要な一歩となる。

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